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PubMedID 17541403 Journal EMBO J, 2007 Jun 20;26(12);2981-90,
Title Truncations of amphiphysin I by calpain inhibit vesicle endocytosis during neural hyperexcitation.
Author Wu Y, Liang S, ..., Matsui H, Tomizawa K
東京都臨床医学総合研究所 カルパインPT  反町洋之研    林 智佳子     2007/08/07

カルパインによるタンパク質分解が関与するエンドサイトーシス制御機構モデル
 本論文は、カルパインによるamphiphysin Iの分解が、神経過剰興奮時におけるシナプス小胞のエンドサイトーシスを抑制するというものです。
 神経細胞ではシナプス小胞のリサイクルがおこなわれ、[神経伝達物質の放出→エンドサイトーシス→小胞再生]を繰り返しています。amphiphysin Iはエンドサイトーシス関連タンパク質で、dynaminとともに陥入した細胞膜のくびれ部分を取り囲み小胞をちぎり取ります。通常はリン酸化・脱リン酸化によって制御されていますが、神経が過剰に興奮しプレシナプスに大量のカルシウムが流入した時のエンドサイトーシス制御機構について解析しています。

・プレシナプスへのカルシウム過剰流入がカルパインによるamphiphysin Iの分解を引き起こす。
・複数の切断部位を同定。
・神経細胞膜やdynaminとの複合体形成が、amphiphysin Iの分解を抑制。
・amphiphysin Iの分解によりdynaminとの結合が抑制され、エンドサイトーシスも抑制される。
・amphiphysin Iの分解が起きることで、過剰な神経伝達物質の放出を抑制している可能性がある。

 上記の一連の実験により、「シナプス過剰興奮→カルシウム濃度上昇→カルパインの活性化→amphiphysin Iの切断→エンドサイトーシス抑制→エキソサイトーシス抑制(神経伝達物質放出抑制)→神経の興奮を抑える」という制御機構があるのではないかといっています。カルパインは様々なプレシナプスタンパク質を基質にすることが報告されていますが、今回amphiphysin Iもその一つとして新たに見出されました。エンドサイトーシスの翻訳後調節機構として、リン酸化・脱リン酸化だけでなくカルパインが関与するものが成立しているのか興味深いところです。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局