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PubMedID 17560372 Journal Mol Cell, 2007 Jun 8;26(5);663-74,
Title Sch9 is a major target of TORC1 in Saccharomyces cerevisiae.
Author Urban J, Soulard A, ..., Hall MN, Loewith R
東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 細胞生理  水島昇研    浅野貴子     2007/08/22

酵母S6Kついに発見される
Torの役割は哺乳類と酵母においてよく似ているが、mTORの代表的基質であるS6キナーゼ(S6K)のホモログを酵母はもっていない。そのため、酵母S6Kに相当する分子の存在はこれまで不明であったが、今回ついにその候補が同定された。
酵母Sch9は、代謝制御、細胞の大きさや寿命の制御、ストレス応答、G0期進入抑制などに関与するキナーゼ(生育には非必須)であり、これまでは哺乳類のAkt/PKBに相当する分子であると考えられてきた。しかし、Sch9はタンパク質合成制御も行っているという報告もあり、Urbanらはこれが実はS6Kに相当するのではないかと予想して、それを検証した。その結果、Sch9のC末端側の6個のSer、ThrがTORC1によって直接リン酸化されること、Sch9がRps6(酵母のS6)をリン酸化すること、リボゾームタンパク質やその生合成系のタンパク質のTORC1による発現制御はSch9に依存することなどが明らかにされた。したがってSch9はS6Kとは相同性を示さないながら、機能的にはS6Kに相当する分子であると結論された。これまでTorの制御下にあると考えられてきた様々な機能(オートファジーなど)にSch9が関与するかどうかなどが今後詳細に調べられるであろう。
   
   本文引用

1 東京大学・分子細胞生物学研究所  生体超高分子研究分野  前田達哉 プロテインホスファターゼとの関係 2007/08/22
酵母のTORC1の下流のシグナル伝達には、PP2Aおよび関連プロテインホスファターゼ(Tap42をサブユニットとする特別な複合体)が重要な役割を果たしていて、ラパマイシンで誘導される多くのイベント(オートファジーは例外)はホスファターゼ活性の調節を介して起こるとずっと考えられてきました。哺乳類細胞でmTORC1自身のキナーゼ活性やその下流のS6キナーゼの役割が強調されて、逆にホスファターゼの関与についてはあまり取り沙汰されてこなかったことと対照的で、不思議なことだなあと思っていました。今回の発見を踏まえて、Sch9とホスファターゼの役割分担、もしくは相互の調節関係が明らかになることを、ひいてはこれまでずいぶん違って見えた酵母と哺乳類のTORC1の下流のシステムをもう少し統一的に考えることができるようになることを期待させられた論文でした。
      
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局