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PubMedID 17687326 Journal Nature, 2007 Aug 9;448(7154);704-8,
Title Global changes to the ubiquitin system in Huntington's disease.
Author Bennett EJ, Shaler TA, ..., Schulman H, Kopito RR
九州大学生体防御医学研究所、分子発現制御学分野  中山敬一研    松本 雅記     2007/09/04

ユビキチン鎖と神経変性疾患
ハンチントン舞踏病原(Huntington’s disease: HD)などのポリグルタミン病をはじめ多くの神経変性疾患においてユビキチン陽性の凝集体が観測されることから、ユビキチン-プロテアソームシステム(UPS)によるタンパク質分解機構の破綻が、神経変性疾患の原因の一つとして挙げられてきた。しかしながら、これらの神経変性疾患の患者やモデルマウスなどにおいてUPSの破綻を正しく評価する実験系がなかったために、この仮説の真偽を検証することは難しかった。

この論文では、ユビキチン鎖の連結部に相当するイソペプチド結合を持つペプチド量を質量分析計を用いて絶対定量法を行うことで、UPSの機能評価を行うシステムを構築し、異常伸長ポリグルタミン鎖HTTタンパク質のUPSへの作用を検証している。その結果、HTTの発現によって、K48連結型のユビキチン鎖の量的変化が生じることが示されている。また、K11連結型やK63連結型の変化も検出しており、HTTの蓄積によってユビキチンシステム全体が大きな影響を受けていることが直接的に示された。

この論文ではHDモデルにおいてユビキチン鎖の量に変化が生じていることを確実に証明していますが、ただそれだけの内容です。こんな単純なことがこれまで証明できていなかったということは意外ですが、考えてみるとウエスタンブロットによるユビキチン化の検出は不明瞭なスメアーパターンを示すため定量性に乏しいし、各々のタイプのユビキチン鎖特異的な抗体でもつくらない限り、どのタイプのユビキチン鎖が影響を受けているかを知ることはできません。ちょっとした技術的な進歩でこれまで取り残されていた問題が解決できた良い例ではないでしょうか。どのユビキチン鎖の変化が神経変性疾患の原因となっているかを問う、問題提起型の論文だと思います。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局