PubMedID |
17828264 |
Journal |
Nat Genet, 2007 Sep 9; [Epub ahead of print] |
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Title |
Loss of ACTN3 gene function alters mouse muscle metabolism and shows evidence of positive selection in humans. |
Author |
Macarthur DG, Seto JT, ..., Yang N, North KN |
東京都臨床医学総合研究所 カルパインPT 反町 洋之 2007/09/27
マラソンはお好き?
部活でマラソンほど嫌なものはなかった人は私だけではないだろう...我々はα-actinin-3をちゃんと持っているのかもしれない。
ヒトACTN3遺伝子は主に白い速筋にα-actinin-3を発現させているが、世の中の10億人以上はR577XというナンセンスSNPを持ち、ホモ接合体(ACTN3-/-)のヒトはα-actinin-3の発現が全く見られない。興味深いことに、従来からスプリンターにはACTN3-/-が平均より少なく、(特に女性の)マラソンランナーにはむしろ多いことが知られていた。そこで、Actn3-/-のマウスを作出して調べたところ、外観・成育などは全く正常、α-actinin-2が代償的に速筋でも発現高進していることが分かった。Actn3-/-マウスの筋切片では、ミトコンドリアの増加、赤い遅筋に多い好気的代謝酵素の速筋での発現高進、逆に嫌気的代謝酵素の低下、が見られた。
さらに、マウスに過酷なマラソン(走れなくなるまで走らせるという残酷なもの!)をさせたところ、Actn3-/-マウスは野生型より33%長く走れた。また、ヒトACTN3の周辺の塩基配列をコホート解析したところ、SNPの入り方から考えて、たかだか数万年の間にpositive selectionがかかったことを示唆した(この部分のデータは微妙)。
ACTN3がACTN2から分化してより俊敏な動きを実現するために、過去の自然淘汰で獲得されたものだとすれば、positiveかどうかはわからないが、最近では俊敏に動くよりもじっと我慢するヒトが選択されてきたということだろうか。特にユーラシアでの浸透率が高く、R577Xアリルは50%に達する。単に嫌いなだけかもしれないので、一度自分のACTN3調べてみて、マラソン選手を目指してみるのもいいかもしれない。