PubMedID | 18200046 | Journal | EMBO J, 2008 Jan 23;27(2);433-46, | |
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Title | Fission and selective fusion govern mitochondrial segregation and elimination by autophagy. | |||
Author | Twig G, Elorza A, ..., Corkey BE, Shirihai OS |
本論文は、マイトファジーにミトコンドリアの分裂が必要なこと、オートファゴソームに取り囲まれるミトコンドリア断片の膜電位が低下していることを直接示した初めての論文だと思います。ご存じのように、ミトコンドリアはダイナミックに融合と分裂を繰り返している。今回の報告では、ミトコンドリアの膜電位およびmt photoactivatable GFP をモニターすることにより、分裂した個々のミトコンドリア断片の膜電位の変化と再融合をモニターしている。分裂した多くの断片は、一過的に膜電位が低下するものの復活し、再び融合できる。しかし、一部は電位が低下したままとなり、そうした脱分極ミトコンドリアがオートファジーにより分解されるようだ。ミトコンドリアの分裂を阻害するとマイトファジーが阻害されること、またオートファゴソーム内のミトコンドリアの膜電位の低下および OPA1 の欠失していることがその証拠である。
前半のミトコンドリアのダイナミックスに関するデータは美しい。しかし、オートファゴソーム内に取り囲まれたミトコンドリアの検出は、必ずしもそうとは言えない。少なくとも、電顕でオートファゴソーム内のミトコンドリアが確かに“脱分極ミトコンドリア”であることを示してほしいと思いました。オートファゴソーム形成過程において脱分極ミトコンドリアをどのように認識して分解するのか、今後の解析に期待したい。
1 | 東京医科歯科大学 細胞生理学分野 水島昇研 石原 直忠 | ミトコンドリア分裂の生理機能 | 2008/02/19 |
壁谷さんもおっしゃられているように、この論文はミトコンドリアのダイナミクスに関して興味深い結果が示された品質の高い論文であると思います。
傷害を受けたミトコンドリアは活性を持つミトコンドリアと融合することによりその機能を相補できると考えられています。一方、ミトコンドリア分裂の生理的な機能ははっきりしておらず、なぜミトコンドリアが(一見無駄に)融合と分裂を繰り返しているのか、よくわかっていませんでした。 この論文の結果から、融合と分裂のダイナミックな動きの中で細胞内のミトコンドリアが浄化されていく可能性が示されています。そのことは(1)分裂により機能的に不均等なミトコンドリアが形成され、娘ミトコンドリアの一方が頻繁に脱分極すること(2)分裂後に脱分極したミトコンドリアは融合活性を失い細胞内で孤立すること(3)ミトコンドリア分裂を阻害すると、ROSは増えないにも関わらずミトコンドリアに酸化蛋白質が蓄積すること、などから示されています。 脱分極し融合活性を失ったミトコンドリアの行き先としてオートファジーによる分解が議論されています。しかしこの論文ではミトコンドリアとGFP-LC3の共局在によってオートファジーが定量されていますが、壁谷さんも指摘されているとおりその像はあまり明確でありません。Atg5欠損細胞を有効に使うなどさらなる確認が必要であったように思います。 > オートファゴソーム形成過程において脱分極ミトコンドリアをどのように認識して分解するのか と言う点はまさに最も興味深い点であると思いますが、その前に、傷害を受けた(脱分極した)ミトコンドリアは本当に選択的にオートファゴソームに取り込まれるのか、さらにはっきり確認する必要があるように思います。 単純に、分裂しないとミトコンドリアが長すぎてオートファゴソームで食べきれない、という可能性もあるのかもしれません。 |
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