Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 18070881 Journal J Biol Chem, 2008 Feb 8;283(6);3409-17,
Title N terminus of calpain 1 is a mitochondrial targeting sequence.
Author Badugu R, Garcia M, ..., Joshi A, Geddes JW
東京都臨床医学総合研究所カルパインPT  反町洋之研    秦 勝志     2008/02/27

mu-calpain活性サブユニットのN末端=ミトコンドリア移行シグナル
近年、cytosolだけでなく様々なオルガネラ画分におけるcalpainの存在が明らかになり、calpainと膜系との密接な関わりが示唆されている。しかし、オルガネラ外膜のcytosol側に結合しているのか、オルガネラ内に局在するのか、また後者の場合に何故calpainがソーティングしうるのかは不明な点が多い。
本論文では、ミトコンドリア画分にmu-calpainが多く存在する脳または神経細胞株を用いて、ミトコンドリアにおけるmu-calpain のIMS(intermembrane space)への局在とその機構の一端を明らかにしている。
mu-calpainとm-calpainは、固有の活性サブユニット(muCL/calpain1、mCL/calpain2)が共通の制御サブユニット(30K/calpain small subunit)とヘテロダイマーを形成する所謂conventional calpainであり、活性サブユニットは全体に高い相同性を有する。その中で、筆者らはmuCLのN末端がmCLに比べ11残基長いことに着目、in silico解析を行ったところ、(1)muCLのN末端約20アミノ酸が、ミトコンドリア輸送タンパク質に見られるamphipathic helical regionであること、(2)matrixへの局在がすでに報告されていたcalpain10のN末端も同様であったが、mCLと30Kには含まれないことを見いだした。
欠失変異体やキメラ変異体を用いたin vitro translationや細胞内局在解析により上記を反映する結果をクリアーに示しており、さらに、amphipathic helical regionを含まない30Kは、muCLとの共存によりミトコンドリアへの移行が可能になること(muCLは30Kがないとタンパク質として不安定なので30Kと一緒に移行する必要がある)、ミトコンドリアに移行してもmuCLのN末端は直ちにプロセシングを受けず、活性化により自己消化することを明らかにした。
mCLはERやGolgiのlumenに存在するとの報告があることから、別の移行シグナルの存在が示唆されている。mu-calpainとm-calpainに限らずこのような報告が今後相次ぐかもしれない。
mu-calpainがAIF(apoptosis inducing factor)を基質とすることから、mu-calpainがIMSに局在することは合理的である。mu-calpainがIMSにおいてどのように活性化するのか? calpastatin(calpain阻害タンパク質)が存在しない(という報告がある)IMSにおいてmu-calpainの活性がどのように制御されるのか? cytosolic mu-calpainとmitochondrial mu-calpainの量的調節機構は? 今後の解析が期待される。
   
   本文引用



Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局