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PubMedID 16998475 Journal Nat Cell Biol, 2006 Oct;8(10);1124-32,
Title Calpain-mediated cleavage of Atg5 switches autophagy to apoptosis.
Author Yousefi S, Perozzo R, ..., Brunner T, Simon HU
京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻  制御発酵学(阪井研)    森垣 亘善     2007/01/09

Atg5 はオートファゴソーム形成に必須なタンパク質でユビキチン様タンパク質Atg12とイソペプチド結合により共有結合する。本論文はAtg5がオートファジーだけでなく、アポトーシスにおいても重要な役割を果たしていることを示した。Atg5 を過剰発現させた細胞では、オートファジーが強く誘導されるが、同時に細胞死も強く誘導された。この細胞死は形態学的に、また、 Caspase-3 活性上昇を伴ったことから、アポトーシスであることが示唆された。さらに、ある種のアポトーシスには Atg5 の切断が必須であることを示した。この切断は Calpain-1,2 によって行われ、Atg5をThr 193 で切断する。切断されたN末端側断片の24K Atg5 はミトコンドリアに転移し、Bcl-xL と結合することにより、cytochrome c の遊離させ、下流のアポトーシス経路を活性化させる。このように、Atg5 の pro-apoptotic signaling pathways の調節における役割を示し、この知見が癌治療に有効であることにも言及している。
 切断されたAtg5のもつこの生理学的意義については興味深いが、Atg5が生化学的にどのような機構でcytochrome cを遊離させているのか、in vitro 系を用いての検証が今後、必要なものと考える。
   
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1 東京医科歯科大学・医歯学総合研究科  細胞生理学分野  水島 昇 Atg12はどうなっているのでしょうか? 2007/01/16
コメントの練習もかねて書いてみます。
この論文は予想外で興味深い展開なのですが、十分な情報が提示されていないので理解困難な部分が多くあります。
 私たちが経験したすべての組織と細胞(HeLaを含む)ではAtg5はすべてAtg12と結合状態にあり、Atg5単独では検出できません。他グループからの報告もそうだと思います。単量体付近に薄いバンドが見えても、Atg5KO細胞でも見えるためいわゆるノンスペと判断しています。一方、驚くべきことに彼らの論文では内因性Atg5単量体がすべての細胞で見えているにも関わらず、Atg12結合についてはひとことも言及がありません。今回の現象が細胞に普通存在するAtg12-Atg5にも該当するのかどうかは示される必要があると思います。Atg5が単量体でいられるのは発現してからAtg12に結合されるまでの非常に短い時間です。血球系細胞は状況が違うのかも知れません。
 通常の細胞にAtg5を高発現させた場合は、Atg5単量体のみが増え、オートファジーに必須なAtg12-Atg5の量はほとんど増えません(Atg12の量が決まっているので)。従って、Atg5の高発現実験は相当人工的な状況といえます。一方、論文ではAtg5のRNAiは5-7日で致死だと書かれていますが、Atg5KO細胞はin vitroでは特に死にやすいことはなく、矛盾があります。抗体とRNAiについてはその特異性についての情報がもう少し必要だと思います。
      
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2 京都大学大学院農学研究科 応用生命科学専攻  制御発酵学分野  阪井康能 Re: Atg12はどうなっているのでしょうか? 2007/01/19
水島さん、コメントありがとうございます。
 私たちのセミナーでも、Atg5-12のconjuate formがFigに見えなかったので、どうなっているんだろう、という話が出ました。私たちが扱っているPichia酵母では、original promoter支配下発現させたAtg5にタグをつけるとAtg5単量体は簡単に検出できますが、Atg5-Atg12の検出には苦労しています。という訳で、今回の論文が、抗体の問題なのか、他の問題なのか、読み込めなかったのですが、動物細胞での状況をご説明頂くことで、勉強になりました。細胞による違いなのか、どうか、少なくとも、抗体の特異性についての説明がもう少し欲しいところだと思います。
      
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