PubMedID |
18222470 |
Journal |
J Mol Biol, 2008 Mar 7;376(5);1224-36, |
|
Title |
Muscle RING-finger protein-1 (MuRF1) as a connector of muscle energy metabolism and protein synthesis. |
Author |
Koyama S, Hata S, ..., Labeit S, Sorimachi H |
東京都臨床医学総合研究所カルパインPT 反町洋之研 小山 傑 2008/02/29
筋特異的RING型E3MuRF1の機能
恐縮ですが、自署を紹介させていただきます。
MuRF1(Muscle RING-Finger Protein-1)は、骨格筋、心筋特異的に発現するRING型Ubリガーゼです。筋萎縮時に発現量が昂進する一方、KOマウスは筋萎縮に耐性を示すことが報告されており、MuRF1は筋タンパク質分解系において主要な役割を担っていると考えられています。本論文では、MuRF1の機能を個体レベル、分子レベルで解析しました。その結果として、エネルギー代謝酵素M-CK(creatine kinase muscle type)、Val代謝酵素HIBADH(3-hydroxyisobutyrate dehydrogenase)、転写調節因子GMEB1(glucocorticoid modulatory element binding protein 1)がMuRF1の基質となることを示しました。また、10%グルコース水のみでの飼育により筋萎縮を誘導すると、KOマウスでは筋萎縮が軽減されるものの血中の必須アミノ酸濃度が低下することや、野生型マウスで抑制される筋タンパク質の合成がKOマウスでは抑制されないことも示しました(このデータは、共同研究者らによるものです)。これらのことから、MuRF1がM-CKの分解を介してエネルギー代謝を制御するとともに、筋タンパク質の分解促進や合成抑制を介してアミノ酸代謝も制御し、生体の代謝恒常性維持に寄与しているというモデルを提唱しました。このモデルに対してはまだまだ多くの検証が必要ですが、酵母Two-Hybridの系においてMuRF1が多くの代謝系酵素と相互作用するという報告にも合致していると考えられます。また、本論文において示された、MuRF1が筋タンパク質の分解のみならず、合成系も制御しているという点も非常に興味深いと思います。そのメカニズム(一部、GMEB1を介した転写レベルでの制御も考えられます)の解明や、ターゲットとなっているタンパク質の同定なども、今後必要になると思います。
不十分な点も多々あるとは思いますが、ご意見、ご批判頂けると幸いです。