Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 18331717 Journal Dev Cell, 2008 Mar;14(3);365-76,
Title PpAtg30 Tags Peroxisomes for Turnover by Selective Autophagy.
Author Farre JC, Manjithaya R, Mathewson RD, Subramani S
京都大学農学研究科応用生命科学専攻 制御発酵学(阪井研)  阪井康能研    山下俊一     2008/03/13

Atg30 の役割
本論文は、これまでのペキソファジー研究で未解明だったペルオキシソーム認識に関与するタンパク質 PpAtg30 を発見し、リン酸化された PpAtg30 が分解対象となるペルオキシソームのタグとして機能することを示しています。
PpAtg30 はペキソファジーにのみ必要で、窒素飢餓条件での macroautophagy や、アミノペプチダーゼI の輸送経路である Cvt-pathway には不要です。また、ペルオキシソーム膜タンパク質 (Pex3 と Pex14)と相互作用することでペルオキシソーム膜上に局在し、そこでリン酸化を受け、PpAtg11 と相互作用するようになります。PpAtg17 とも相互作用しますが、これはリン酸化に依存しません。このように、PpAtg30 はペルオキシソーム認識に関わり、autophagy machinery とペルオキシソームを結び付ける役割を果たしています。
PpAtg30 を過剰発現させると、ペキソファジー誘導条件でなくてもペルオキシソームが分解されますが、pex3delta と pex14delta での発現や、PpAtg30 S112A(リン酸化部位の点変異) の過剰発現ではこの分解がほとんど起こらなかったことから、過剰発現によって basal なリン酸化レベルが上昇したことで分解が引き起こされたと筆者らは解釈しています。これらの結果から、ペキソファジーは PpAtg30 のリン酸化レベルで制御されており、高リン酸化レベルで、ペルオキシソームが autophagy machinery へとリクルートされることでペキソファジーがスイッチオンとなり、ペルオキシソームとともに分解されることでスイッチオフになると考えられました。
また、PpAtg30 はミクロペキソファジー時の、液胞によるペルオキシソームの包み込みには関与しませんが、PpAtg11 の液胞隔離膜上への局在変化には必要でした。さらに、MIPA やペキソファゴソームといったペキソファジーに必須な膜新生に必要であったことなどから、膜新生過程などにもペルオキシソーム認識が必要であることが示唆されました。
今後の展開としては、キナーゼの同定や PpAtg17 との相互作用に関する解析を行うことがペルオキシソーム認識機構だけでなく、ペキソファジーのシグナルについての理解を深めることにつながると思います。また、液胞の包み込みについては未解明な点が多く残されているので、こちらについての解析も必要でしょう。
   
   本文引用

1 基生研・分子細胞生物学研究部門  大隅良典研  鈴木邦律 マクロペキソファジー 2008/03/13
この論文を読んだ後,一番知りたくなるのは,macropexophagy誘導時にperoxisomeにpexophagosomeの膜をどうやって連れてきているんだろうか?ということです.S. cerevisiaeのCvt経路では,Ape1-Atg19複合体をめがけてAtg8が集まってきます.P. pastorisでも同様に,peroxinがAtgタンパク質を集めてくる機構があってもいい気がします.少なくともこの論文ではPpAtg30-PpAtg8の相互作用は示されていません.その辺りがどうなっているか知りたいです.
      
   本文引用
2 東京医科歯科大学細胞生理学分野  水島研究室  細川奈生 MIPAとPpgと液胞膜の伸長 2008/04/02
この論文を読んだ時の疑問を投稿させていただきます。

鈴木さんのおっしゃるように、PpAtg30にAtg8が集合してこれば効率的にペルオキシソームを包みこむことができますし、液胞膜の伸長にPpAtg30が不要だという点も理解しやすいです。

すこし類似した疑問かもしれませんが、PpAtg30が液胞膜の伸長には必要ないとすれば、液胞自身はそこにペルオキシソームがいることを認識しているのでしょうか?

液胞とAtg因子による膜(MIPA、Ppg)とで異なるペルオキシソーム認識機構が働いていれば、マクロペキソファジーとミクロペキソファジーの使い分けや誘導機構の理解にも役立ちそうに感じました。
液胞からの誘導がかからない時にはマクロペキソファジーでPpgが囲いこみ、液胞からの誘導がかかる時にはミクロペキソファジーで最後にMIPAを用いて閉じる、とか・・・
ちょっと強引過ぎでしょうか?

コメントいただければ幸いです。
      
   本文引用


Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局