PubMedID |
18332441 |
Journal |
Proc Natl Acad Sci U S A, 2008 Mar 10; [Epub ahead of print] |
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Title |
Confinement of caspase-12 proteolytic activity to autoprocessing. |
Author |
Roy S, Sharom JR, ..., Saleh M, Nicholson DW |
東京都臨床医学総合研究所 カルパインPT 反町 洋之 2008/03/18
自分しか切らないプロテアーゼ?
カスパーゼ(Casp)12は、マウスではERストレスからのアポトーシスに重要と考えられているが、Casp12-/-マウスの解析からは少なくとも無くても良いことが示されている。Casp12は、Casp1, 4, 5とともに炎症関連カスパーゼであり、構造的にグループを成す。大部分のヒトはCasp12遺伝子にin-frameストップコドンを持ち、酵素本体は翻訳されていない。アフリカ人の一部でCasp12の全長を発現する一塩基置換を持つが、有意に重症敗血症にかかりやすいことが示された。その後、Casp12-/-マウスで敗血症に抵抗性を示すこと、Casp12はCasp1に直接結合し活性を抑えること、それにはCasp12の活性は必要ないこと、などが示され、Casp12はヒト・マウス両方において、Casp1を通じて炎症反応を抑制することが示された。即ち(多くの場合)Casp12はない方が良いというわけだ(ただし、LPSショックに感受性になってしまう)。
本論文では、そのメカニズムを知るためにCasp12の酵素学的解析をした。その結果、Casp12は確かに自己消化酵素活性(分子間及び分子内の両方)を持ち、自己消化部位(…ATAD↓)を含むペプチド基質も分解することが判明した(ただし比活性はCasp3の数万分の一)。しかし、Casp1, 4, 5はもちろん、Casp3, 8, 9も、これらの基質であるPARP, IL-1β, IGF, ICADなども、全く切断しなかった。カスパーゼ3の数100の基質を同定しうるdiagonal 2次元電気泳動-マス解析を用いたプチプロテオミックな方法でも、全く基質が同定されなかった。作者らも認めているように、これだけの解析からCasp12の基質は自分自身だけ、というのは言い過ぎであるが、かなりシャープな基質特異性を持つ可能性は高い(ただし、ATADという配列を持つタンパク質はヒトに100個以上ある)。また、Casp12はCasp1との複合体中で、Casp1には切られず、自己消化はすることを示しているが、上述のようにCasp1阻害にCasp12活性は不要のため、Casp12自己消化の意義は未だに不明である。現在、Casp12-/-マウスにC→A型不活性Casp12をTgするなどして、この点を解析しているそうだ。
門外漢なので、バックグラウンドや実験の解釈に誤りがありましたら、是非ともお教えください。