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PubMedID 18278057 Journal Nat Struct Mol Biol, 2008 Mar;15(3);228-36,
Title Crystal structure of a chaperone complex that contributes to the assembly of yeast 20S proteasomes.
Author Yashiroda H, Mizushima T, ..., Yamane T, Tanaka K
東京都臨床医学総合研究所先端研究センター  田中啓二研    八代田英樹     2008/03/21

出芽酵母20Sプロテアソーム形成に関わるDmp1/Dmp2の立体構造解析
 私たちの研究室では既に動物細胞の20Sプロテアソーム形成支援シャペロンとしてPAC1, 2, 3を報告していますが、今回出芽酵母の20Sプロテアソーム形成に関わるシャペロン複合体を新たに同定、解析しましたので報告いたします。

 私はプロテアソーム関連の新しい遺伝子を見つけようと出芽酵母でアミノ酸アナログに感受性となる変異株を探索するところからこの研究を始めました。プロテアソームに異常があるとアミノ酸アナログが取り込まれて作られた変性タンパク質をうまく分解できないためアミノ酸アナログ感受性になることがあります。約4,000個の非必須遺伝子破壊株から選んでdmp1 (degradation of misfolded protein) 株と名付けた株はアミノ酸アナログ感受性の他にポリユビキチン化タンパク質の蓄積やモデル基質の分解遅延などの表現型を持つことがわかりました。また、Dmp1と結合しているタンパク質を質量分析により解析したところ機能未知のタンパク質とプロテアソームのαサブユニットであるα5とα6が同定されました。機能未知タンパク質の欠損株もdmp1株と同じようにアミノ酸アナログ感受性となりましたので新しく同定されたタンパク質にはDmp2と名前を付けました。Dmp1とDmp2についてわかったことをまとめると次のようになります。

1)Dmp1とDmp2はヘテロダイマーを形成し機能している。
2)dmp1破壊株、dmp2破壊株では20Sプロテアソームの量が減っている。
3)Dmp1/Dmp2はα5サブユニットと直接結合する。
4)Dmp1/Dmp2は完成した20Sプロテアソームには結合していない。
5)dmp1破壊株ではα4のないαリング様の異常な構造体が観察される。

 これらのことからDmp1/Dmp2は出芽酵母の20Sプロテアソーム形成に関わる新規シャペロン複合体であると結論しました。

 また、名古屋大学の水島恒裕博士、名古屋市立大学の加藤晃一先生との共同研究でDmp1/Dmp2のX線結晶構造解析を行ったところDmp1、Dmp2、PAC3がそれぞれ非常に良く似た構造を持つことがわかりました。アミノ酸の一次配列にはほとんど相同性がないのに三者がこれほどそっくりな構造を持つと分かったときは本当に驚きました。現在、PAC3はPAC4とヘテロダイマーを形成することが分かっており、Dmp1/Dmp2とPAC3/PAC4はいずれも20Sプロテアソーム形成初期の中間体にのみ結合しているという機能的な類似点を持っていることからもDmp1/Dmp2とPAC3/PAC4は相同な機能を持つ保存されたシャペロンと思われます。

 さらにDmp1/Dmp2-α5の構造解析からはDmp1/Dmp2がαリング上でβサブユニットより内側に結合しα4、5、6サブユニットと結合面を持つことがわかりました。βサブユニットは2つのαサブユニットとしか結合面を持ちませんのでDmp1/Dmp2が3つのαサブユニットと結合面を持つことはαリングを形成するという機能に即した特徴と言えます。またDmp1/Dmp2はβ4とαリング上で共存し得ないという知見も得られました。我々が同定した細胞内のDmp1/Dmp2を含む中間体はαリングとβ2で形成されています。これらのことからDmp1/Dmp2はαリングにβ2が結合するところまでのプロテアソーム形成を支援し、β3、4が入るときにはその機能を終えてプロテアソーム中間体から離れるというモデルが構造解析からも支持されたことになると思います。
   
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Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局