Proteolysis Forum
トップ

PubMedID 18337468 Journal Mol Biol Cell, 2008 Mar 12; [Epub ahead of print]
Title Constitutive Activation of Chaperone-mediated Autophagy in Cells with Impaired Macroautophagy.
Author Kaushik S, Massey AC, Mizushima N, Cuervo AM
基礎生物学研究所 分子細胞生物学研究部門  大隅良典研    壁谷 幸子     2008/03/25

オートファジー不能細胞ではCMA 活性が著しく上昇する
 哺乳動物細胞は、3つのタイプのオートファジーが知られている。マクロオートファジー、ミクロオートファジー、シャペロン介在性オートファジー(CMA)である。CMAは、唯一選択性をもつオートファジーであるが、バルクな分解のマクロオートファジーとは無関係ではない。栄養飢餓時に、マクロオートファジーが活性化した後、遅れてCMA が活性化することを筆者らが以前報告しているからである。

 今回の報告では、タイトルにあるようにマクロオートファジー不能細胞においてCMA を調べたところ、富栄養条件下でさえも、CMA が亢進していることが分かった。これは、2つのタイプのオートファジーが相互に関係していることを示唆している。確かに、CMA 不能細胞においてマクロオートファジー活性が増加するという筆者らの以前の報告とも一致する。

 本論文のキーポイントは、CMAの活性化メカニズムを調べている点である。CMA 活性化に伴いリソソームにおけるLamp2, Hsc70 量が増加する。これは、転写レベルの増加ではなく、リソソーム膜での安定性が高まっていることに起因するようだ。しかもその安定性は、オートファゴソームがリソソームと融合した結果得られるという。個人的には、その融合で0.3 上昇するリソソーム内のpHを検出できている点に目をひかれた。さらに、Lamp2 等の安定性はpHの変化よりむしろ融合したときの膜の脂質組成が変化することが重要かもしれない、とする筆者らの推察は興味深い。しかし、この論文でのキーポイントでありながら、核心に触れるデータに乏しい点は残念である。加えて、富栄養条件でオートファゴソーム形成が少ない条件でもCMA 活性が上昇する機構について、十分な説明にはなっていない。今後、彼女らがもつ、in vitro CMA活性測定を生かして、CMAの詳細な活性化機構およびマクロオートファジーとCMAの相互関係がより明らかになることを期待したい。
   
   本文引用

1 東京医科歯科大学  細胞生理  水島昇 マクロオートファジーが全てではない 2008/03/26
壁谷さん、論文読んでいただきどうもありがとうございました。そもそもこの仕事は、2001年のAtg5KO ES細胞の論文で、オートファジーをKOしてもリソソームでの長寿命タンパク質分解活性がかなり(約30%)残るということから始まりました。結局ちょっと違った展開になってしまい、今回の論文はオートファジーのFluxを恒常的にうけているリソソームと、そうでないリソソームの性質に差があるかどうかを調べた論文とも言えます。エンドサイトーシスからのFluxに比べればオートファジーの貢献は少ない気もしますが、定量的な解析はないと思います。また、Rubinszteinらが最近のTrafficで述べているように、オートファゴソームとリソソームの融合形式としてkiss-and-runタイプが多いのであれば、中身は交換しても膜成分はあまり交換しないかも知れません。さらに、HeLa細胞に比べると線維芽細胞のリソソームの分解活性は低いように見えますので、MEFを使ったこの解析で特によく違いが見えたのかも知れません。リソソームを理解するのは難しいです。
      
   本文引用


Copyright 特定領域研究「タンパク質分解による細胞・個体機能の制御」事務局