PubMedID |
17517623 |
Journal |
Proc Natl Acad Sci U S A, 2007 May 29;104(22);9511-6, |
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Title |
Roles of heat-shock protein 90 in maintaining and facilitating the neurodegenerative phenotype in tauopathies. |
Author |
Luo W, Dou F, ..., Greengard P, Chiosis G |
首都大学東京、理工学研究科、生命科学専攻 神経分子機能研究室 遠藤良 2008/03/27
変異タウおよびp35のプロテアソームによる分解をHsp90が制御
〜タウオパチーにおけるHsp90の役割〜
これまでにタウタンパクの変異およびタウタンパクの異常リン酸化がタウオパチーの原因であることがわかっています。また、セリン・スレオニンキナーゼであるCdk5は、タウタンパクの異常リン酸化に関与することが明らかとなっています。
この論文で筆者らは、Hsp90活性とタウタンパクの凝集との関連を見ています。まず、Hsp90の活性を阻害剤で阻害すると、変異タウ(P301L)およびCdk5の活性化サブユニットであるp35がプロテアソームによって分解されることを示しています。p35の分解に伴って、Cdk5の活性が低下していることも示されています。変異タウは分解されている一方で、WTタウ蛋白は影響を受けません。また、Hsp90の阻害によって、Hsp70の発現量が増加するデータも示されています。次に変異タウおよびp35は、Hsp90とcomplexを形成していることを示しています。そこで筆者らは、Hsp90が変異タウおよびp35の分解を制御していると考えています。その為にHsp90の活性を阻害することで変異タウおよびp35の安定性を変化させ、プロテアソームによる分解が促進されるのではないかと論じています。更に筆者らは、Hsp90の活性を阻害することでタウタンパクの凝集を抑制し、また凝集したタウタンパクも減少するデータを発表しています。このことから、筆者らはHsp90を阻害することで、タウタンパクの凝集が原因の一つと考えられる神経変性疾患の治療につながるのではないかと期待しています。
今回の論文の主な内容として、Hsp90を阻害することで、変異タウタンパクの凝集をプロテアソームによる分解によって抑制することが出来る可能性を示唆したものです。一方でHsp90とp35のプロテアソームによる分解との関連についても検討されています。私自身現在p35のプロテアソームによる分解について研究を行っていますことから、今回の論文は、非常に興味深いものでした。全体的なデータも綺麗かと思われます。ただし本論文において、Hsp90の阻害によってHsp70の発現の上昇が誘導されることが示してあるのですが、このHsp70がプロテアソームの活性化には関与していないと述べているのですがそれをはっきりと示すデータがなく、本当にHsp70は関与していないのか疑問に思えました。