PubMedID |
18310072 |
Journal |
J Biol Chem, 2008 Feb 29; [Epub ahead of print] |
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Title |
Multiple molecular interactions implicate connectin/titin N2A region as a modulating scaffold for p94/calpain 3 activity in skeletal muscle. |
Author |
Hayashi C, Ono Y, ..., Labeit S, Sorimachi H |
東京都臨床医学総合研究所 カルパインPT 反町洋之研 林 智佳子 2008/03/31
p94が関与する骨格筋機能の制御機構モデル
−コネクチンN2A領域における多様な筋分子相互作用−
本論文は、コネクチンN2A領域における筋分子の相互作用にp94プロテアーゼ活性がどのように関わるかという観点から解析を行い、p94を介した骨格筋機能の制御機構を明らかにすることを目的に取り組んだものです。カルパインプロジェクトで行われている研究のうちの一つをご紹介するつもりで投稿させていただきます。
p94/カルパイン3は骨格筋特異的なCa2+依存性のシステインプロテアーゼです。p94遺伝子の病原性変異によるプロテアーゼ活性不全は、筋ジストロフィー(カルパイノパチー)を引き起こします。一方で、コネクチン/タイチンのN2A領域にin-frameの微小欠失があると、p94-コネクチン間の相互作用に支障を来たし、結果としてマウスにおいて深刻な筋ジストロフィー(mdm)を引き起こします。p94は、コネクチンN2A及びM線領域との相互作用を介して、筋原線維における分子scaffoldとしての役目を果たすコネクチンフィラメントシステムの構成因子の一つとなっています。したがって、p94-コネクチン複合体の構造的及び機能的メカニズムは、筋細胞の保全・維持のために必要不可欠であると考えています。
本論文では、COS7細胞のタンパク質発現系を用いて、p94及びコネクチンN2Aを共発現させ、免疫沈降法によって相互作用解析を行いました。その結果、既にYTHによる解析で明らかにされているp94結合領域以外に、新規p94結合領域の存在を確認し、p94の結合が複数部位で可能であることが明らかとなりました。p94-N2Aコネクチン間の相互作用はp94の自己消化を抑制し、タンパク質分解からコネクチンを保護することが示唆されました。コネクチンN2A領域にはストレス応答に関与するとされている筋アンキリン反復タンパク質(MARPs)の結合部位も含まれていますが、今回、MARP2/Ankrd2がコネクチンへの結合についてp94と競合し、p94の基質となることも明らかとなりました。一方で、mdm欠失のあるコネクチンN2A断片は、p94を含むプロテアーゼによる分解に耐性を示し、MARPsの相互作用が減弱しました。以上の結果から、コネクチンを足場に複合体を形成することが、各分子に安定化を提供すると同時に、酵素-基質複合体としての切断機能の効率化をもたらすこと、そしてp94によるタンパク質分解を介して、コネクチンやMARP2などの筋分子機能の発現が複合的に調節されていることが考えられました。また、mdmの場合にはシグナル伝達の各段階でアンバランスが生じていると考えられます。骨格筋でのカルパインが関与する生体制御機構について今まで分子的実体が不明でしたが、今後解析を進める上での重要な方向性を与え、その理解の一助になる報告であると考えています。