PubMedID |
18329368 |
Journal |
Cell, 2008 Mar 7;132(5);818-31, |
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Title |
Active caspase-1 is a regulator of unconventional protein secretion. |
Author |
Keller M, Ruegg A, Werner S, Beer HD |
東京大学薬学部遺伝学教室(三浦正幸研) 三浦正幸研 山口良文 2008/04/24
活性化カスパーゼ-1はタンパク質の非典型的分泌を制御する。
Leader配列を持つ多くの分泌性タンパク質はER/golgi経路を経て分泌される。一方で、Leader配列が無くER/golgi経路ではない非典型的経路により細胞外に分泌されるタンパク質も存在する。しかし、この非典型的分泌の分子機構はこれまで殆ど明らかになっていなかった。このような非典型的経路により分泌されるタンパク質としてIL-1b, IL-18等のサイトカインが知られていた。これらはカスパーゼ-1によるプロセシングを受けて活性のある成熟型となり分泌される。興味深いことに、カスパーゼ-1自身やその活性化に関わるインフラマソームの構成因子NALP3やASCもインフラマソーム形成後に非典型的経路により分泌される。このようなインフラマソーム活性化と非典型的経路による分泌との相関から、インフラマソームやカスパーゼ−1は非典型的分泌経路の重要な構成因子である可能性が示唆されていた。
今回の報告で、筆者らはカスパーゼ−1欠損マクロファージにおいてカスパーゼ−1の基質であるIL-1bだけでなく基質でないIL-1aの分泌も減少することに着目し、カスパーゼ−1の非典型的分泌機構への関与を検討した。阻害剤や酵素活性変異体を用いた解析から、マウス活性化マクロファージやUVB照射した初代培養ヒトケラチノサイもしくは繊維芽細胞において、カスパーゼ−1の酵素活性はIL-1bだけでなくproIL-1aやFGF2などの非典型的分泌にも必要であることが示された。興味深いことに、proIL-1aやFGF2はカスパーゼ-1と結合するがカスパーゼ-1による切断は受けない。従って、非典型的分泌経路においてカスパーゼ-1はキャリアーとして働く可能性がある。筆者らはさらに、初代培養ヒトケラチノサイトでカスパーゼ-1阻害剤の有無により培養上清中の量が変化するタンパク質をiTRAQ法を用いて網羅的にスクリーニングし、Bid, Aip1/Wdr, annexin A2, thioredoxin-1など多くのタンパク質がカスパーゼ-1活性依存的に分泌されうることを示している。
今回の結果から、カスパーゼ-1はこれまで知られていたIL-1bの分泌のみならず、その他のleaderlessタンパク質の分泌をも制御しうる因子であることが示されました。この論文ではカスパーゼ-1依存的分泌を調べるために、マウス活性化マクロファージとUVB照射した初代培養ヒトケラチノサイト/繊維芽細胞を用いています。カスパーゼ-1の役割はこうした感染や傷害時における非典型的による分泌に限られるのか、通常の生理的状態やほかの組織で起こるのか、個人的には興味深いところです。また、カスパーゼ-1は非典型的分泌においてキャリアーとしての働きを持つようですがそれはどのようなメカニズムなのか、カスパーゼ-1/インフラマソームの活性化が分泌に必須なのはなぜか、非典型的分泌における細胞膜の状態はどうなっているのか、非典型的分泌の生理的意義はそもそも何か、等々、未解明な点が多く今後が楽しみです。