文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

神経細胞のALS脆弱性における選択的オートファジーの役割

研究代表者

浅川 和秀(Kazuhide Asakawa)
国立遺伝学研究所・遺伝形質研究系 特命准教授
https://kazuhide-asakawa.com/

浅川 和秀

研究課題の概要と計画

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋肉の収縮を制御する神経細胞「運動ニューロン」が変性する、という特異的な神経細胞の脆弱性によって特徴付けられる。我々は、熱帯魚ゼブラフィッシュをモデルに用いて、ALS脆弱性が高いとされる大きい運動ニューロンほど、オートファジー流動が亢進しており、細胞内ATPレベルが低い傾向があることを見出した。本研究は、ミトコンドリアが主要な細胞内ATPの供給路であることを考慮に入れ、選択的オートファジーの一つであるマイトファジーによるミトコンドリアの品質管理が、運動ニューロンのATPレベルの維持に果たす役割を検証する。さらに、ALSの主要な病態であるTDP-43の相転移異常が、オートファジー流動や細胞内ATPレベルを低下させることで、ALS病態を加速している可能性を検証する。これらのアプローチにより、選択的オートファジーの多様性を明らかにすると共に、神経細胞のALS脆弱性とオートファジー流動の因果関係を明らかにし、ALSの病態の理解に貢献することを目指す。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Asakawa K, Handa H, Kawakami K. Optogenetic modulation of TDP-43 oligomerization accelerates ALS-related pathologies in the spinal motor neurons. Nat. Commun., 2020, 11:1004.

Asakawa K and Kawakami K. Protocadherin-mediated cell repulsion controls the central topography and efferent projections of the abducens nucleus. Cell Rep., 2018 24:1562-1572.

Asakawa K, Gembu A and Kawakami K. Cellular dissection of the spinal cord motor column by BAC transgenesis and gene trapping in zebrafish. Front. Neural Circuits, 2013, 7:100.

キーワード

ALS, selective vulnerability, motor neuron, autophagic flux, TDP-43, mitophagy, optogenetics, metabolism, ATP, zebrafish