文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

プロテアソームから選択的オートファジーへの新たな活性化機構の解明

研究代表者

小林 聡(Akira Kobayashi)
同志社大学・大学院生命医科学研究科 教授
https://akobayas.wixsite.com/genetic-code-lab

小林 聡

研究課題の概要と計画

細胞内のタンパク質恒常性(プロテオスタシス)を維持するユビキチン-プロテアソーム系が破綻すると、特異的なタンパク質分解系である選択的オートファジーが活性化し、変性タンパク質を除去する(JCB 2018)。この選択的オートファジーの活性化メカニズムでは、p62アダプターがリン酸化を受けユビキチン化タンパク質と結合することで相分離を起こすことが知られているが、不明な点は多く残されている。本研究では、ユビキチン-プロテアソームから選択的オートファジー活性化へのスイッチングという新たなマルチモードオートファジーの分子メカニズムとその生理的意義にについて解明することを研究目的としている。この解明のために鍵となる発見として、研究代表者はプロテアソームを誘導する転写因子NRF1 (NFE2L1)がp62のcondensate形成を促進すること、さらにGABARAPL1を発現誘導することを見出している。そこで本研究では、プロテアソーム機能低下によるNRF1のp62 condensate形成機構とGABARAPL1誘導の機能的意義について解明する。そして解明された知見を、研究代表者が作製した神経特異的Nrf1ノックアウトマウスで検証する。この一連の研究から新たなマルチモードオートファジーの展開につなげる。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Waku T, Katayama H, Hiraoka M, Hatanaka A, Nakamura N, Tanaka Y, Tamura N, Watanabe A, Kobayashi A. NFE2L1 and NFE2L3 complementarily maintain basal proteasome activity in cancer cells through CPEB3-mediated translational repression. Mol. Cell. Biol., 2020, 40, e00010-20.

Tsuchiya Y, Taniguchi H, Ito Y, Morita T, Karim MR, Ohtake N, Fukagai K, Ito T, Okamuro S, Iemura S, Natsume T, Nishida E, Kobayashi A. The CK2-Nrf1 axis controls the clearance of ubiquitinated proteins by regulating proteasome gene expression. Mol. Cell. Biol., 2013, 33, 3461-3472.

Kobayashi A, Tsukide T, Miyasaka T, Morita T, Mizoroki T, Saito Y, Ihara Y, Takashima A, Noguchi N, Fukamizu A, Hirotsu Y, Ohtsuji M, Katsuoka F. Yamamoto M. Central nervous system-specific deletion of transcription factor Nrf1 causes progressive motor neuronal dysfunction. Genes Cells., 2011, 16, 692-703.

キーワード

選択的オートファジー、プロテアソーム、p62、相分離、遺伝子発現、NRF1、GABARAPL1