文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

アミノ酸リサイクルによるオートファジー活性のファインチューニング

研究代表者

関藤 孝之(Takayuki Sekito)
愛媛大学・大学院農学研究科 教授
http://web.agr.ehime-u.ac.jp/~idenshi/index.html

関藤 孝之

研究課題の概要と計画

オートファジー分解産物の液胞/リソソームからサイトゾルへの排出は、非選択的オートファジーがその生理的役割を果たす上で不可欠なプロセスと考えられる。私たちは酵母を用いて多数の液胞アミノ酸トランスポーターを同定解析し、これらトランスポーターの多重欠損によって液胞からのアミノ酸排出低下が顕著化することを見出した。本研究では、この多重欠損株を用いて(1)窒素飢餓条件での呼吸能および生存率維持(2)胞子形成(3)定常期における呼吸生育移行といったオートファジー生理機能発現へのアミノ酸リサイクルの貢献度を検討する。また、オートファジーの持続・終結における液胞アミノ酸トランスポーターの間接的および直接的作用について解析を進める。間接的作用としてはサイトゾルに供給されたアミノ酸がAtgタンパク質合成を介してオートファジー活性に与える影響を調べるとともに、TORC1再活性化の有無、およびその下流ではたらく各Atgタンパク質の挙動を解析する。一方、直接的作用については液胞アミノ酸トランスポーターがTORC1との物理的相互作用を介して下流への情報伝達を制御するトランスセプターとしての役割とその分子機構について検討する予定である。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Sekito T, Chardwiriyapreecha S, Sugimoto N, Ishimoto M, Kawano-Kawada M, Kakinuma Y. Vacuolar transporter Avt4 is involved in excretion of basic amino acids from the vacuoles of Saccharomyces cerevisiae. Biosci. Biotechnol. Biochem., 2014, 78(6): 969-975.

Fujiki Y, Teshima H, Kashiwao S, Kawano-Kawada M, Ohsumi Y, Kakinuma Y, Sekito T. Functional identification of AtAVT3, a family of vacuolar amino acid transporters, in Arabidopsis. Biochem. Biophys. Res. Commun., 2017, 591(1): 5-15.

Kawano-Kawada M, Manabe K, Ichimura H, Kimura T, Harada Y, Ikeda K, Tanaka S, Kakinuma Y, Sekito T. A PQ-loop protein Ypq2 is involved in the exchange of arginine and histidine across the vacuolar membrane of Saccharomyces cerevisiae. Sci. Rep., 2019, 9(9): 15018.

キーワード

液胞、トランスポーター、オートファジー、TORC1、Saccharomyces、cerevisiae