細胞競合を駆動する細胞非自律的オートファジー誘導機構の遺伝学的解明

研究代表者 永田 理奈（Rina Nagata） 京都大学・生命科学研究科　特定研究員 https://www.lif.kyoto-u.ac.jp/genetics/

研究課題の概要と計画

細胞競合とは、組織中に生じた変異細胞や異常細胞が周囲の正常細胞との相互作用を介して排除される現象である。例えば、細胞競合により排除される変異細胞（「敗者細胞」）は、単独では生存可能でも正常細胞（「勝者細胞」）に近接した場合には細胞死を起こす。これまでの研究では敗者細胞の細胞死機構に着目した解析が進められ、細胞競合における最も重要なクエスチョンである「勝者細胞が隣接する敗者細胞の細胞内シグナルをどのようにして変化させるのか」という細胞非自律的メカニズムはわかっていなかった。そのような中、我々はこれまでに、ショウジョウバエ上皮中で異なるトリガーによって引き起こされる細胞競合に共通して、敗者細胞は勝者細胞に近接すると細胞非自律的にオートファジー活性を上昇し、これにより細胞死が引き起こされることを見いだした。本研究では、我々が独自に確立した細胞競合モデルを用いた遺伝学的解析を行うことで、細胞競合時に勝者細胞に近接した敗者細胞でオートファジー活性が上昇するメカニズムを明らかにすることを目的とする。これにより、細胞競合の本質である細胞非自律的メカニズムを解明するとともに、オートファジーの新たな役割とそれを介した組織恒常性維持のコンセプトを確立することを目指す。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Nagata R, Akai N, Kondo S, Saito K, Ohsawa S, Igaki T. Yorkie drives supercompetition by non-autonomous induction of autophagy via bantam microRNA in Drosophila. Curr. Biol., 2022, 32, 1064-1076.

Sanaki Y, Nagata R, Kizawa D, Leopold P, Igaki T. Hyperinsulinemia drives epithelial tumorigenesis by abrogating cell competition. Dev. Cell, 2020, 53, 379-389.

Nagata R, Nagata R, Kizawa D, Leopold P, Igaki T. Cell competition is driven by autophagy. Dev. Cell, 2019, 51, 99-112.

キーワード

Cell competition, Cell death, Protein synthesi