文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

神経軸索再生におけるオートファジー制御因子の役割

研究代表者

久本 直毅(Naoki Hisamoto)
名古屋大学・大学院理学研究科 教授
https://sites.google.com/view/nagoyamb6

久本 直毅

研究課題の概要と計画

オートファジーは種を超えて保存されたシステムであり、栄養飢餓適応やプログラム細胞死、感染防御等のさまざまな生命現象を制御している。近年の網羅的解析による研究から、モデル生物である線虫Caenorhabditis elegansにおいて、オートファジーを制御する因子であるULKが、切断された神経軸索の再生を促進することが明らかになっている。しかし、そのメカニズムの詳細については不明の部分が多い。我々は最近、ULKが既知のオートファジー経路に加えて、ヒスチジン残基のリン酸化誘導を介した新規の経路も同時に活性化することで、軸索再生を促進することを新たに見出した。そこで本研究課題では、[1] ULK-ヒスチジンホスファターゼによる神経軸索再生制御 [2] オートファジーによる軸索再生制御 [3] ULKを活性化する上流因子の実体とそれによる活性化機構 の3つのテーマの解析を行うことで、オートファジー制御因子による軸索再生制御の詳細について解明する。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Shimizu T, Sugiura K, Sakai Y, Dar AR, Butcher RA, Matsumoto K, Hisamoto N. Chemical Signaling Regulates Axon Regeneration via the GPCR-Gqα Pathway in Caenorhabditis elegans. J. Neurosci., 2022, 42, 720-730.

Hisamoto N, Tsuge A, Pastuhov SI, Shimizu T, Hanafusa H, Matsumoto K. Phosphatidylserine exposure mediated by ABC transporter activates the integrin signaling pathway promoting axon regeneration. Nat. Commun., 2018, 9: 3099.

Alam T, Maruyama H, Li C, Pastuhov SI, Nix P, Bastiani M, Hisamoto N, Matsumoto K. Axotomy-induced HIF/serotonin signaling axis promotes axon regeneration in C. elegans. Nat. Commun., 2016, 7, 10388.

キーワード

C. elegans、神経軸索再生、ULK、ヒスチジンリン酸化、ヒスチジンホスファターゼ