文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

タンパク質凝集体分解促進のための新規アグリファジー誘導経路

研究代表者

松本 弦(Gen Matsumoto)
長崎大学・医歯薬学総合研究科 講師

松本 弦

研究課題の概要と計画

多くの神経変性疾患では、ユビキチン化されたタンパク質凝集体の蓄積が観察される。タンパク質凝集体はプロテアソームでは分解できないため、タンパク質凝集体の選択的オートファジー(アグリファジー)により分解される。我々はこれまでに、アミロイド線維化したタウ凝集体を恒常的に維持する細胞株(タウ凝集細胞株)を構築し、タウアミロイドの分解を促進するNUT (Nagasaki-University Tau project)化合物を開発した。NUT化合物で処理した細胞では、p62のS403リン酸化が亢進し、オートリソソームの数も増加したことから、NUT化合物がアグリファジーを制御する分子カスケードを活性化した結果として、タウ凝集体の分解除去が促進したと考えられる。本研究では、NUT化合物の作用機序を明らかにすることで、アグリファジー活性を制御する細胞内分子機構を解明することを目的としている。アグリファジーを制御する分子機構の解明は、タンパク質を選択的に分解する多様な選択的オートファジーがどのようにコントロールされているのかという問題の包括的な理解につながり、脳老化などの一般的生命現象の謎を解く端緒となることが期待できる。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Ono M, Komatsu M, Takado BJY, Shimojo M, Minamihisamatsu T, Warabi E, Yanagawa T, Matsumoto G, Aoki I, Kanaan NM, Suhara T, Sahara N, Higuchi M. A central role for p62/SQSTM1 in the elimination of toxic tau species in a mouse model of tauopathy. Aging Cell, 2022, e13615. DOI: 10.1111/acel.13615.

Matsumoto G, Inobe T, Amano T, Murai K, Nukina N, Mori N. N-Acyldopamine induces aggresome formation without proteasome inhibition and enhances protein aggregation via p62/SQSTM1 expression. Sci. Rep., 2018, 8, 9585.

Matsumoto G, Wada K, Okuno M, Kurosawa M, Nukina N. Serine 403 phosphorylation of p62 regulates selective autophagic clearance of ubiquitinated protein. Mol. Cell, 2011, 44, 279-289.

^

キーワード

アグリファジー、選択的オートファジー、p62/SQSTM1、アミロイド、タウ、アルツハイマー病、認知症