文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

ピースミールクロロファジーの多様性と選択性賦与のメカニズム

研究代表者

石田 宏幸(Hiroyuki Ishida)
東北大学・農学研究科 教授
https://www.agri.tohoku.ac.jp/jp/laboratory/syokuei/

石田 宏幸

研究課題の概要と計画

植物は光独立栄養生物であり、葉緑体には窒素栄養の多くが分配されタンパク質として機能している。Rubiscoなど主要な葉緑体タンパク質は葉の老化時や栄養飢餓条件下では分解され、転流窒素源や糖の代替呼吸基質として個体の成長や生存に重要なリソースとなる。これまで私たちは、葉緑体の一部分が本体から切り離され、Rubiscoが小胞RCB(Rubisco-containing body)として、コアATG因子に依存したマクロオートファジーにより液胞に輸送・分解されるピースミールクロロファジー経路の存在を見出した。またRCBの形成誘導は他の細胞質基質とは区別される選択的オートファジーによるものである可能性を示した。その後、ATI1-PS bodyなどRCBに類似する構造体を介したピースミールクロロファジー経路が、異なる研究グループから次々と発表された。本研究ではRCB経路に関わる基本問題のうち、1. RCB 形成時における葉緑体本体からのストロマ成分の選択的な切り離しや、2. 他の細胞質基質との区別、に関わるメカニズムについて明らかにする。さらに3. RCB の液胞への輸送ルートの多様性について、これまで単離してきた変異体を材料に明らかにする。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Ishida H, Okashita Y, Ishida Hiromi, Izumi M, Hayashi M, Makino, A, Bhuiyan N.H, van Wijk K.J. GFS9 affects piecemeal autophagy of plastids in young seedlings of Arabidopsis thaliana. Plant Cell Physiol., 2021, 62: 1372-1386.

Wada S, Hayashida Y, Izumi M, Kurusu T, Hanamata S, Kuchitsu K, Makino A, Ishida H. Autophagy supports biomass production and efficient nitrogen remobilization at the vegetative stage in rice. Plant Physiol., 2015, 168: 60-73.

Ishida H, Yoshimoto K, Izumi M, Reisen D, Yano Y, Makino A, Ohsumi Y, Hanson MR, Mae T. Mobilization of Rubisco and stroma-localized fluorescent proteins of chloroplasts to the vacuole by an ATG gene-dependent autophagic process. Plant Physiol., 2008, 148: 142-155.

キーワード

Arabidopsis (Arabidopsis thaliana), Chloroplasts, Leaf senescence, Nutrient recycling, Piecemeal autophagy, Plastids, Rice (Oryza sativa), Rubisco-containing bodies (RCBs)