文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

オルガネロファジーと血管障害

研究代表者

森戸 大介(Daisuke Morito)
昭和大学・医学部 講師
https://researchmap.jp/7000011224

森戸 大介

研究課題の概要と計画

私たちは脳血管疾患もやもや病の責任遺伝子をクローニングし、ミステリンと名付けました(別名RNF213)。もやもや病は東アジアの小児に多く、頭蓋内の特定部位で動脈が狭窄することにより血流が低下し、脳虚血、脳梗塞を生じる疾患です。また低下した血流を補うため特徴的な側副血行路(もやもや血管)が形成されますが、その部位から出血することがあります。ミステリン遺伝子の変異によりもやもや病の発病リスクは100倍以上上昇しますが、変異によりなぜ動脈狭窄が引き起こされるのか、またなぜ特定部位でのみ病変が形成されるのか、いずれも明らかではありません。私たちはミステリンのクローニング、ATPアーゼ活性とユビキチンリガーゼ活性の検出、ミステリンが脂肪滴に局在する代謝制御因子であることの解明などを行ってきましたが(PLOS ONE, 2011; Sci Rep, 2014, 2015, 2017; J Cell Biol, 2019, いずれも筆頭もしくは責任著者)、最近、Randowらによりミステリンが細胞に侵入した感染性細菌をユビキチン化してゼノファジーと炎症を活性化することが報告されました(Nature, 2021)。本研究課題ではミステリンによる膜ユビキチン化とオートファジーに着目しながら、ミステリン変異が血管を障害するメカニズムの解明を進めます。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Sugihara M, *Morito D, Ainuki S, Hirano Y, Ogino K, Kitamura A, Hirata H, Nagata K. The AAA+ ATPase/ubiquitin ligase mysterin stabilizes cytoplasmic lipid droplets. J. Cell Biol., 2019, Mar 4;218(3):949-960.

Kotani Y, *Morito D, Ainuki S, Hirano Y, Ogino K, Kitamura A, Hirata H, Nagata K. Alternative exon skipping biases substrate preference of the deubiquitylase USP15 for mysterin/RNF213, the moyamoya disease susceptibility factor. Sci. Rep., 2017, Mar 9;7:44293.

Kotani Y, *Morito D, Yamazaki S, Ogino K, Kawakami K, Takashima S, *Hirata H, *Nagata K. Neuromuscular regulation in zebrafish by a large AAA+ ATPase/ubiquitin ligase, mysterin/RNF213. Sci. Rep., 2015, Nov 4;5:16161.

キーワード

もやもや病、ミステリン、RNF213、ユビキチン、オルガネロファジー