公募研究
隣接細胞損傷のもたらすp62構造体形成の場の加齢による変容の解析
研究代表者矢野 環(Tamaki Yano) |
研究課題の概要と計画
腸管上皮組織は腸内細菌が体腔内に漏出しないための物理的バリアとして重要であるが、加齢依存的に徐々にバリア破綻が生じ、これが全身性の炎症性疾患の病態を悪化させる。近年我々はショウジョウバエ腸管をモデル系として、腸内常在菌に対して生じるわずかに過剰な、しかし慢性的な損傷応答が、加齢依存的なバリア破綻を起こすこと、また、その損傷応答は損傷した腸管上皮細胞に隣接した細胞で形成される選択的オートファジーのアダプターp62の多量体からなる構造体をシグナルプラットフォームとしていることを明らかにしてきた。我々はさらにこのp62構造体が、若齢時は細胞極性と細胞接着に応じた「場」に形成されるが、加齢に伴いその細胞内極性を変化させ、それが腸管バリア破綻の原因となるシグナルの異常な活性化を起こしていることを見出している。そこで本研究では、加齢依存的な病態の研究が容易なショウジョウバエの利点を生かし、隣接細胞の損傷感知依存的なp62構造体の形成機構、形成の場の加齢による変化の分子機構、老齢期に腸管上皮組織で選択的オートファジー機能が低下する分子機構の解明を目指す。これにより、選択的オートファジーによる腸管組織恒常性の維持機構が、生涯にわたり保持されることの生理的意義を明らかにしたいと考えている。
本研究課題に関連する代表的論文3報
Nagai H, Tatara H, Tanaka-Furuhashi K, Kurata S, Yano T. Homeostatic Regulation of ROS-triggered Hippo-Yki Pathway via Autophagic Clearance of Ref(2)P/p62 in Drosophila Intestine. Dev. Cell, 2021, 56, 81-94.
Nagai H, Kurata S, Yano T. Immunoglobulin superfamily beat-Ib mediates intestinal regeneration induced by reactive oxygen species in Drosophila. Genes to Cells, 2020, 25, 343-349.
Nagai H, Yano T. Selective autophagy tolerated symbiotic bacteria in the Drosophila intestine. Autophagy, 2021, 17, 1057-1058.
キーワード
p62body, intestinal epithelium, cell damage, age-related dysfunction, Drosophila