小腸上皮におけるミクロオートファジーの分子機構

研究代表者 和田 洋（Yoh Wada） 大阪大学・産業科学研究所　准教授 https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/smb/

研究課題の概要と計画

多細胞生物の発生においては細胞間の情報伝達はきわめて大きな役割を担っています。マウス初期胚の形態形成には細胞極性の獲得による上皮組織の構築, そしてTGF-やWntなどの多彩な情報伝達経路が時空間軸に沿って正確に制御されることが必須となります。私たちは、マウス初期胚の上皮組織で、リソソームがエンドソームを「飲み込む」、ミクロオートファジーとして知られる膜ダイナミクスが起きていることを明らかにしてきました。最近、新生仔の小腸の吸収上皮でも、ミクロオートファジーによってエンドソーム・リソソーム間の輸送がおこなわれることを見いだしました。初期胚とは異なり、小腸上皮からは生化学的な研究に十分な試料を得ることができ、さらには数日にわたる組織培養が可能です。この利点を活かして、ミクロオートファジーのメカニズムを明らかにしていきます。ミクロオートファジーが実現するにはエンドソームを飲み込むことができるような大きなリソソーム＝液胞の形成が必要となります。新生仔の小腸にみられる大きな液胞は、離乳期には消失することが知られています。大きな液胞を形成する条件はどのようなものか、を明らかにすることがミクロオートファジーを理解することにつながるものと考えています。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Sun-Wada GH, Tabata H, Wada Y. Vacuolar-type proton ATPase is required for maintenance of apicobasal polarity of embryonic visceral endoderm. Sci. Rep., 2021, 11:19355.

Kawamura N, Takaoka K, Hamada H, Hadjantonakis AK, Sun-Wada GH, Wada Y. Rab7-mediated endocytosis establishes patterning of Wnt activity through inactivation of Dkk antagonism. Cell Rep., 2020, 31:107733.

Wada Y. Vacuoles in mammals: a subcellular structure indispensable for early embryogenesis. Bioarchitecture, 2013, 3:13-19

キーワード

Enterocyte, Endocytosis, Lysosome, HOPS complex, Microautophagy, Rab7, Vacuole