文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

シナプス形成におけるオートファジーの役割の解明

研究代表者

井端 啓二(Keiji Ibata)
聖マリアンナ医科大学・医学部 講師
http://www.marianna-u.ac.jp/physiology/index.html

井端 啓二

研究課題の概要と計画

神経回路の形成や再構築が効率よく行われるためには細胞内および細胞外成分の分解が必要である。例えば細胞外では細胞外マトリックスが軸索の伸長を阻害すること、細胞内ではシナプスの足場タンパク質がシナプス形成に影響を与えることが知られている。私たちはこれまでにシナプス形成を誘導する分子Cbln1が軸索のリソソームから分解酵素カテプシンBと共に分泌されることを明らかにし、古い環境の分解と新しいシナプスの構築を効率良く引き起こす機構の存在を示した。また、その分泌機構にはシンタキシン4とSNAP29が必要なことを明らかにした。この2つの膜融合分子がオートファジーの経路に関わる分子であることから、前回の公募研究ではCbln1とLC3の局在を調べ、Cbln1とLC3との共局在や、Cbln1がLC3陽性の小胞から神経活動依存的に分泌されることを見出した。一方、Cbln1がLC3と同じ小胞に存在することから、Cbln1がオートファジーの経路によって分解を受け、それによって軸索のCbln1の量が変化することで、シナプス形成やシナプスの数が調節される可能性がある。そこで本研究課題ではオートファジーを制御することによって、軸索のシナプス前部の数の変化や、シナプス前部に局在するタンパク質の増減が起こるかを初代培養系および個体レベルで調べ、神経軸索で起こるシナプス形成および再構築機構を明らかにすることを目指す。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Ibata K, Yuzaki M. Destroy the old to build the new: Activity-dependent lysosomal exocytosis in neurons. Neurosci. Res., 2021, 167: 38-46.

Ibata K, Kono M, Narumi S, Motohashi J, Kakegawa W, Kohda K, Yuzaki M. Activity-dependent secretion of synaptic organizer Cbln1 from lysosomes in granule cell axons. Neuron, 2019, 102: 1184-1198.

Ibata K, Sun Q, Turrigiano GG. Rapid synaptic scaling induced by changes in postsynaptic firing. Neuron, 2008, 57: 819-826.

キーワード

エキソサイトーシス(exocytosis)、リソソーム(lysosome)、シナプス形成因子(synapse organizer)、軸索(axon)、神経細胞(neuron)