文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

ATG結合系の非オートファジー機能とその神経変性における役割の解明

研究代表者

桑原 知樹(Tomoki Kuwahara)
東京大学・大学院医学系研究科 講師
http://www.neuropathology.m.u-tokyo.ac.jp/

桑原 知樹

研究課題の概要と計画

オートファジーにおいて、ATG結合系はオートファゴソームの脂質二重膜へのLC3結合に必須であるが、その非オートファジー機能としてエンドリソソームを含む一重膜にLC3を結合させることも報告されている。LC3の一重膜結合は細胞への貪食刺激やリソソームの過積載、pH上昇、イオンバランス攪乱等をもたらすストレス刺激によって誘導されるため、特にリソソームの適切な機能維持に必要と考えられるが、その役割やメカニズムの詳細は明らかではない。一方、我々は代表的な神経変性疾患であるパーキンソン病の病因キナーゼLRRK2が、リソソーム一重膜へのLC3結合を促す各種刺激時にATG結合系を介してリソソーム膜上に局在化して活性化し、基質であるRab8やRab10をリン酸化することでリソソームの恒常性維持に働くことを見出した。そこで本研究では、ATGの新規の非オートファジー機能としてリソソーム恒常性維持に着目し、LRRK2を鍵分子と捉えて解析を進めることで、その分子機構の全貌と細胞における役割を明らかにする。また、ATG結合系の非オートファジー機能のみを欠損するマウスの解析を進め、生体におけるATG非オートファジー機能の役割を見出すとともに、神経変性や異常タンパク質蓄積病理の形成に果たす役割を明らかにする。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Kuwahara T, Funakawa K, Komori T, Sakurai M, Yoshii G, Eguchi T, Fukuda M, Iwatsubo T. Roles of lysosomotropic agents on LRRK2 activation and Rab10 phosphorylation. 2020, Neurobiol. Dis., 145: 105081.

Eguchi T*, Kuwahara T* (*co-first), Sakurai M*, Komori T, Fujimoto T, Ito G, Yoshimura S, Harada A, Fukuda M, Koike M, Iwatsubo T. LRRK2 and its substrate Rab GTPases are sequentially targeted onto stressed lysosomes and maintain their homeostasis. PNAS, 2018, 115: E9115-E9124.

Kuwahara T, Inoue K, D'Agati VD, Fujimoto T, Eguchi T, Saha S, Wolozin B, Iwatsubo T, Abeliovich A. LRRK2 and RAB7L1 coordinately regulate axonal morphology and lysosome integrity in diverse cellular contexts. Sci. Rep., 2016, 6:29945.

キーワード

non-canonical autophagy, ATG conjugation system, lysosome, LRRK2, neurodegeneration