公募研究
核酸導入によって活性化する選択的オートファジーの分子機構の解明
研究代表者小川 英知(Ogawa Hidesato) |
研究課題の概要と計画
細胞は細胞外からの様々な分子の侵入を即座に検知し,それらを排除するために選択的オートファジー機構を使用する。これまでに異物周辺分子のユビキチン(Ub)化が起こり,続いてオートファジー機構がリクルートされることが報告されているが,一方で異物の認識とその応答機構は不明な点が多い。この選択的オートファジー機構は,外来異物だけでなく外来の核酸に対しても同様に働くため,特に核酸導入が必要な基礎研究や医療の場では大きな障害となっている。我々はこれまでにオートファジーレセプターp62に着目し,p62の欠損が核酸導入効率の著しい促進効果を示すこと,その原因が細胞質に侵入した核酸周辺のUb化の遅延であることを突き止めている。本研究では, 核酸の認識に関与するp62複合体を同定し,オートファジー活性下の複合体構成因子の集積について経時的変化を追うことで,異物侵入に対する選択的オートファジー制御の実体を明らかにする。この研究成果は,異物に対する細胞の認識・応答機構の解明のみならず,核酸の導入法の確立やウイルスの感染防御における新たな方法論を確立させ,既存の技術や医薬品の効果を簡便な方法でより大きな成果に変えることを可能にすると考えている。
本研究課題に関連する代表的論文3報
Tsuchiya M, Ogawa H, Koujin T, Mori C, Osakada H, Kobayashi S, Hiraoka Y, Haraguchi T. p62/SQSTM1 promotes rapid ubiquitin conjugation to target proteins after endosome rupture during xenophagy. FEBS Open Bio. 2018, Feb 7;8(3):470-480.
Tsuchiya M, Ogawa H, Koujin T, Kobayashi S, Mori C, Hiraoka Y, and Haraguchi T Depletion of autophagy receptor p62/SQSTM1 enhances the efficiency of gene delivery in mammalian cells. FEBS letter. 2016, 590(16):2671-80.
Tsuchiya M, Isogai S, Taniguchi H, Tochio H, ShirakawaM, Morohashi K, Hiraoka Y, Haraguchi T, Ogawa H. Selective autophagic receptor p62 regulates the abundance of transcriptional coregulator ARIP4 during nutrient starvation. Scientific Reports. 2015, 5, 14498.
キーワード
autophagy, xenophagy, virus infection, gene delivery, protein complex, DNA transfection