文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

植物の動的成長を駆動する時空間特異的オートファジー

研究代表者

郷 達明(Goh Tatsuaki)
奈良先端科学技術大学院大学・先端科学技術研究科 助教
https://bsw3.naist.jp/courses/courses110.html

郷 達明

研究課題の概要と計画

植物は胚発生後にも器官新生を継続し、動的かつ可塑的に成長を続ける特有の発生動態を示す。このような植物の動的成長を駆動するためには、高度に統御されたオルガネラや細胞の再構成系が必要と考えられるが、その機構は明らかになっていない。植物の根の先端に位置する根冠は、細胞層の新生と剥離を周期的に繰り返すことで、植物ホルモンの分配や土壌環境との相互作用を担っており、根の成長制御に重要な役割を果たしている。これまでに、植物の根冠細胞は、細胞層の剥離に先立ち、液胞の肥大化を伴って再構成されること、また、オートファジーがこの過程に関わることを見出した。本研究課題では、成長する根の先端を追尾する機能を搭載した独自の顕微鏡システムを駆使して、液胞の肥大化やオルガネラの配置転換、オートファジー動態を高精細に経時観察して、オートファジーの時空間的制御機構、および、オートファジーによる細胞の再構成機構を明らかにする。また、植物細胞は細胞壁により強固に接着しているため、根冠の細胞層剥離には細胞壁の適切な改変が必要である。そこで、オートファジーによる細胞の再構成が、細胞壁の改変という細胞外イベントに与える影響を解析する。これらを通して、植物の発生過程における細胞再構成の制御機構とその役割の解明を目指す。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Goh T, Toyokura K, Yamaguchi N, Okamoto Y, Uehara T, Kaneko S, Takebayashi Y, Kasahara H, Ikeyama Y, Okushima Y, Nakajima K, Mimura T, Tasaka M, Fukaki H. Lateral root initiation requires the sequential induction of transcription factors LBD16 and PUCHI in Arabidopsis thaliana. New Phytol. 2019, 224(2):749-760.

Toyokura K, Goh T, Shinohara H, Shinoda A, Kondo Y, Okamoto Y, Uehara T, Fujimoto K, Okushima Y, Ikeyama Y, Nakajima K, Mimura T, Tasaka M, Matsubayashi Y, Fukaki H. Lateral inhibition by a peptide hormone-receptor cascade during Arabidopsis lateral root founder cell formation. Dev. Cell. 2019, 48(1): 64-75.e5.

Goh T, Toyokura K, Wells DM, Swarup K, Yamamoto M, Mimura T, Weijers D, Fukaki H, Laplaze L, Bennett MJ, Guyomarc'h S. Quiescent center initiation in the Arabidopsis lateral root primordia is dependent on the SCARECROW transcription factor. Development. 2016, 143(18):3363-71.

キーワード

root cap, vacuole, secretion, cell wall, cell detachment, time-lapse imaging