公募研究
細胞競合を介して抗腫瘍的に機能するオートファジーモードの解析
研究代表者昆 俊亮(Kon Shunsuke) |
研究課題の概要と計画
オートファジーはがんの発生・進展に深く関与しており、がんの中・後期、すなわち腫瘍が拡張・進展する段階においてはがん細胞の生存・増殖を助長すると考えられている。一方、発がんに対しては相反して拮抗的に機能することが示唆されているが、その制がん機構の詳細は不明な点が多い。近年の研究成果より、上皮細胞層にがん変異を有する細胞が少数産生されると、正常上皮細胞とがん変異細胞との間で互いに生存を争う細胞競合と呼ばれる現象が生じ、その結果変異細胞が管腔へと排除されることが明らかとなってきた。培養細胞を用いたこれまでの我々の解析より、正常細胞に取り囲まれたがん変異細胞ではautophagic fluxは遅延するが、変異細胞が管腔へと排除されるためにはオートファゴソームの形成が必要であることを示唆する結果が得られている。そこで本課題では、細胞競合を正に制御するオートファゴソームの非分解機能の本態を明らかにすることにより、制がん機能を担うオートファジーモードを解明することを目的とする。そのために、培養細胞を用いたプロテオミクス解析に加え、細胞競合マウスモデルを用いて、Ras誘発性の発がん超初期におけるオートファジーのがん抑制機能を生体内で評価する。
本研究課題に関連する代表的論文3報
Ishibashi K, Egami R, Nakai K, Kon S. An anti-tumorigenic role of the Warbrug effect at emergence of transformed cells. Cell Structure and Function. 2018, 43, 171-176.
Watanabe H, Ishibashi K, Mano H, Kitamoto S, Sato N, Hoshiba K, Kato M, Matsuzawa F, Takeuchi Y, Shirai T, Ishikawa S, Morioka Y, Imagawa T, Sakaguchi K, Yonezawa S, Kon S*, Fujita Y*. Mutant p53-expressing cells undergo necroptosis via cell competition with the neighboring normal epithelial cells. Cell Reports. 2018, 23, 3721-3729 *同等責任著者
Kon S, Ishibashi K, Katoh H, Kitamoto S, Shirai T, Tanaka S, Kajita M, Ishikawa S, Yamauchi H, Yako Y, Kamasaki T, Matsumoto T, Watanabe H, Egami R, Sasaki A, Nishikawa A, Kameda I, Maruyama T, Narumi R, Morita T, Sasaki Y, Enoki R, Honma S, Imamura H, Oshima M, Soga T, Miyazaki J, Duchen MR, Nam JM, Onodera Y, Yoshioka S, Kikuta J, Ishii M, Imajo M, Nishida E, Fujioka Y, Ohba Y, Sato T, Fujita Y. Cell competition with normal epithelial cells promotes apical extrusion of transformed cells through metabolic changes. Nature Cell Biology. 2017, 19, 530-541.
キーワード
anti-tumorigenic role of autophagy、cell competition、non-degradable autophagosomes、 cell competition mouse model