文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

単細胞生物におけるオートファゴソーム形成の場を構築する機構の解明

研究代表者

鈴木 邦律(Suzuki Kuninori)
東京大学・大学院新領域創成科学研究科 准教授
http://ps.k.u-tokyo.ac.jp/

鈴木 邦律

研究課題の概要と計画

出芽酵母では、オートファジーが誘導されると、Atg(autophagy-related)タンパク質が液胞膜上に集積してPAS(pre-autophagosomal structure)を形成する。PASから隔離膜(以下IM)が伸展し、閉じることで被分解物を内包した球状の二重膜胞であるオートファゴソーム(以下AP)が形成される。IMは小胞体とCOP II小胞形成に関わる機能領域であるER exit site(以下ERES)を介して相互作用している。以降その相互作用部位をIM-ERESコンタクトと呼ぶ。我々は、出芽酵母のIM可視化法を使用して、小胞体を標識する脂溶性の色素R18が、オートファジー誘導に伴いIMに移行することを見いだした。本研究は、(1)R18を使用したIM膜の供給源の解明、(2)IM伸展におけるIM-ERESコンタクトの機能解析、(3)IM伸展におけるPASの機能解析の3点に注目して推進する。予備的実験から、R18は細胞膜に局在したのちに小胞体へと移行することが分かった。まず、出芽酵母においてR18の小胞体染色に関わる経路を解析する。我々は、IM-ERESコンタクトが形成されることで、IM伸展およびR18によるIM染色が可能になることを見いだした。そこで、伸展中のIMをfluorescence recovery after photobleaching解析し、小胞体からIMへの脂質の移行を可視化する。PASの役割については、出芽酵母およびイネいもち病菌を用いてPASとIMとを別々の構造体として可視化する研究に着手する。本研究を完遂することで、IM伸展に関わる3種類のコンタクトの機能分担を明確にし、IM伸展機構の全体像を理解することができるだろう。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Fujioka Y, Alam JM, Noshiro D, Mouri K, Ando T, Okada Y, May AI, Knorr RL, Suzuki K, Ohsumi Y. and Noda NN. Phase separation organizes the site of autophagosome formation. Nature 2020, 578, 301-305.

Kawaoka T, Ohnuki S, Ohya Y. and Suzuki K. Morphometric analysis of autophagy-related structures in Saccharomyces cerevisiae. Autophagy 2017, 13, 2104-2110.

Hirata E, Ohya Y. and Suzuki K. Atg4 plays an important role in efficient expansion of autophagic isolation membranes by cleaving lipidated Atg8 in Saccharomyces cerevisiae. PLoS ONE 2017, 12, e0181047.

キーワード

Autophagosome, Autophagy, Autophagy-related proteins, Autophagy-related structures, Endoplasmic reticulum exit site, Isolation membrane, Octadecyl Rhodamine B, Pre-autophagosomal structure, Rice blast fungus, Yeast