文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

アミノ酸トランスポーターが担うオートファジー維持機構と炎症遷延化

研究代表者

反町 典子(Sorimachi Noriko)
国立国際医療研究センター・研究所 プロジェクト長
http://www.ri.ncgm.go.jp/department/pro/01/abstract.html

反町 典子

研究課題の概要と計画

本研究は、アミノ酸トランスポーターSLC15A4に依存したオートファジー維持機構を理解し、オートファジーの維持が炎症応答に果たす役割を明らかにすることを目的とする。
SLC15A4は、免疫細胞のLAMP1陽性小胞に局在するプロトン共役型アミノ酸/オリゴペプチドトランスポーターで、申請者らはこれまでに、この分子がTLR7/9やNOD1/2が媒介する炎症応答に根幹的役割を果たし、全身性エリテマトーデスや炎症性腸疾患などの病態形成を担うこと、そのメカニズムとしてmTORC1の活性制御を担うこと、mTORC1の下流でTFEBによるリソソーム生合成経路をコントロールし、炎症細胞の分泌機能を制御することを報告してきた。SLC15A4によるmTORC1の活性制御のメカニズムを明らかにするため、近位依存性ビオチン標識法によるSLC15A4相互作用分子の網羅的抽出を行ったところ、複数のmTORC1関連分子とオートファジー制御因子を同定し、さらにSLC15A4がアミノ酸飢餓下においてオートファジーを維持する上で重要であることを見いだした。
本研究ではSLC15A4相互作用分子を手掛かりとして、SLC15A4によるオートファジー維持機構を明らかにし、SLC15A4に依存したオートファジーが炎症応答の維持・遷延化に果たす役割について理解を進め、それによって新たな疾患治療戦略の作出に資する知見を得ることを目指す。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Kobayashi T, Shimabukuro-Demoto S, Yoshida-Sugitani R, Furuyama-Tanaka K, Karyu H, Sugiura Y, Shimizu Y, Hosaka T, Goto M, Kato N, Okamura T, Suematsu M, Yokoyama S, and Toyama-Sorimachi N*. The Histidine Transporter SLC15A4 Coordinates mTOR-Dependent Inflammatory Responses and Pathogenic Antibody Production. Immunity 2014, 41(3):375-388.

Kobayashi T, Tsutsui H, Shimabukuro-Demoto S, Sugitani-Yoshida R, Karyu H, Furuyama-Tanaka K, Kato N, Okamura T, Ohshima D, Toyama-Sorimachi N.* Lysosome biogenesis regulated by the amino-acid transporter SLC15A4 is critical for functional integrity of mast cells. Int. Immunol. 2017, 29(12):551-566.

Kobayashi T, Shimabukuro-Demoto S, Tsutsui H, Toyama-Sorimachi N.* Type I interferon limits mast cell-mediated anaphylaxis by controlling secretory granule homeostasis. PLOS Biology 2019, 17 (11), e3000530.

キーワード

amino acid transporter, autophagy, mTORC1, inflammation, lysosome, Toll like receptor, innate immune cells