文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

腸管寄生性原虫赤痢アメーバにおけるオートファジータンパク質の機能解明

研究代表者

津久井 久美子(Tsukui Kumiko)
国立感染症研究所・寄生動物部 主任研究官

津久井 久美子

研究課題の概要と計画

オートファジーは広く真核生物に保存されていると同時に、自食作用以外の機能も知られる。本研究では初期に分化した原生生物である腸管寄生性原虫赤痢アメーバにおけるユニークなオートファジー分子の機能を明らかにしたい。
我々はこれまで赤痢アメーバのAtg8が貪食胞に動員され、貪食胞成熟に関与すること、さらに本原虫にユニークなAtg5-12/16複合体を明らかにした。Atg8の貪食胞成熟過程における機能を明らかにする過程で、Atg8依存的に貪食胞へ動員される分子の一つがトロゴサイトーシス様の現象に関与する可能性を見いだした。トロゴサイトーシスは生きた標的細胞をかじりながら取り込む貪食様式のことであり、食細胞が標的の表面分子を自身に提示する情報交換システムとしても注目される。そこで本研究の第1の目標としてトロゴサイトーシスとオートファジー分子の関係解明を目指す。さらに我々はAtg5-12/16複合体に転写因子が含まれることを見いだした。この転写因子は赤痢アメーバの病原性に関連し、グルコース枯渇により転写量が増加するとされる。そこで第2の目標としてAtg5-12/16複合体と転写因子制御の分子メカニズム、さらに環境要因と転写制御のメカニズムを解明し、Atg5-12/16複合体のユニークな機能を明らかにする。本研究からオートファジータンパク質の真核生物における普遍性と多様性を明らかにしたい。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Watanabe N, Nakada-Tsukui K, Nozaki T. Two isotypes of phosphatidylinositol 3-phosphate-binding sorting nexins play distinct roles in trogocytosis in Entamoeba histolytica. Cell Microbiol. 2020, 22(3):e13144.

Somlata, Nakada-Tsukui K, Nozaki T. AGC family kinase 1 participates in trogocytosis but not in phagocytosis in Entamoeba histolytica. Nat Commun. 2017, 8(1):101.

Picazarri K, Nakada-Tsukui K, Tsuboi K, et al. Atg8 is involved in endosomal and phagosomal acidification in the parasitic protist Entamoeba histolytica. Cell Microbiol. 2015, 17(10):1510-1522.

キーワード

Atg8, autophagy, Entamoeba histolytica, lysosome, phagocytosis, protozoan parasite, transcription, trogocytosis