文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

内分泌細胞の生理的なホルモン分解機構を解明する

研究代表者

鳥居 征司(Torii Seiji)
群馬大学・食健康科学教育研究センター 教授
https://www.cfw.gunma-u.ac.jp/html/members_029.html

鳥居 征司

研究課題の概要と計画

老化や疾病においてホルモンの分泌要求が弱まると、内分泌細胞は蓄えたホルモンを分解して多大なエネルギーを要する分泌機能を抑えるが、これには分泌顆粒がリソソームと融合し内容物のホルモンが分解される機構「クリノファジー」が関与している。本研究では、これまでに培ってきた分泌顆粒に関する知見や開発した分解解析系を用いて、クリノファジーに関わる蛋白質や誘導シグナルの同定を行い、ペプチドホルモンの分解過程を解明する。本研究で分泌顆粒の分解機序が明らかになれば、連動することが推察されるホルモンの産生・分泌機構の研究にも影響を与えることが予期され、糖尿病など様々な疾患研究に貢献することが期待できる。
内分泌細胞中の分泌顆粒数は非常に多いが、一方でクリノファジーにより分解されるものは僅かなため、生化学的解析はとても難しい。そこで我々は、以前に開発した新旧ホルモンを別々に標識するマルチタグ・ラベリング法を応用したホルモン分解解析システムを作成した。本研究ではこれを使用し、分解過程の分泌顆粒に作用する特異的な蛋白質の同定と、顆粒蛋白質や膜脂質に現れるシグナルの発見を目指す。また並行して、分泌顆粒膜蛋白質フォグリンが膵β細胞におけるクリノファジーに関与していることを証明する。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Torii S, Kubota C, Saito N, Kawano A, Hou N, Kobayashi M, Torii R, Hosaka M, Kitamura T, Takeuchi T, Gomi H. The pseudophosphatase phogrin enables glucose-stimulated insulin signaling in pancreatic β cells. J Biol Chem. 2018, 293, 5920-5933.

Hou N, Mogami H, Kubota-Murata C, Sun M, Takeuchi T, Torii S. Preferential release of newly synthesized insulin assessed by a multi-label reporter system using pancreatic β-cell line MIN6. PLoS ONE 2012, 7, e47921.

Saito N, Takeuchi T, Kawano A, Hosaka M, Hou N, Torii S. Luminal interaction of phogrin with carboxypeptidase E for effective targeting to secretory granules. Traffic 2011, 12, 499-506.

キーワード

Endocrine, Secretory granules, Glucose, Insulin, Exocytosis, Sorting, Aging, Crinophagy