文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

選択的オートファジーの化合物による制御

研究代表者

有本 博一(Hirokazu Arrimoto)
東北大学・大学院生命科学研究科 教授
https://www.lifesci.tohoku.ac.jp/research/fields/laboratory---id-7811.html

有本 博一

研究課題の概要と計画

オートファジーを活性化/阻害する化合物は、これまでに数多く報告されているものの、医薬品化などの利用は進んでいなかった。課題のひとつは、従来型のオートファジー誘導剤には、特定の生体分子をオートファジー分解するための選択性である。
オートファジーと並ぶ主要分解系であるUPSでは、ユビキチン化のプロセスが分解基質選択性を決めている。
PROTACに代表される化合物は、望みの基質とユビキチンE3リガーゼの近接化を誘導するため、基質のユビキチン化効率を上げて選択的分解に導く。臨床試験においても分解効果がみられたことが最近発表され、実用化に大きく前進した。
本研究課題では、AUTAC (Autophagy-targeting chimera)を題材に、化合物による選択的オートファジー分解の制御を研究する。この技術は抗菌オートファジーから着想を得たもので、数種の細胞内タンパク質や機能不全ミトコンドリアの自在分解に成功したことから、創薬のツールとしても期待がある。一方、AUTACの働きには不明な点が多く残されており、学術的には作用機序の解明が必要である。本研究により、さらに自由度の高い標的特異的分解技術に育ててゆきたい。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Takahashi D, Moriyama J, Nakamura T, Miki E, Takahashi E, Sato A, Akaike T, Itto-Nakama K, Arimoto H. AUTACs: Cargo-Specific Degraders Using Selective Autophagy. Molecular Cell, 2019, 76, 797-810.E10.

Ito C, Saito Y, Nozawa T, Fujii S, Sawa T, Inoue H, Matsunaga T, Khan S, Akashi S, Hashimoto R, Aikawa C, Takahashi E, Sagara H, Komatsu M, Tanaka K, Akaike T, Nakagawa I, Arimoto H. Endogenous nitrated nucleotide is a key mediator of autophagy and innate defense against bacteria. Molecular Cell, 2013, 52,794-804.

Sawa T, Zaki M.H, Okamoto T, Akuta T, Tokutomi Y, Mitsuyama S.K, Ihara H, Kobayashi A, Yamamoto M, Fujii S, Arimoto H, Akaike T. Protein S-guanylation by the Biological Signal 8-nitroguanosine 3',5'-cyclic Monophosphate. Nature Chem. Biol, 2007, 3, 727-735. 

キーワード

selective autophagy; Targeted protein degradation (TPD); AUTAC; PROTAC