文部科学省科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型) 令和元年~5年度(2019年~2023年度) マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解

膵β細胞の恒常性維持に重要なオートファジーの転写後制御の解析

研究代表者

栁谷 朗子(Yanagiya Akiko)
沖縄科学技術大学院大学・細胞シグナルユニット 研究員
https://groups.oist.jp/csu

栁谷 朗子

研究課題の概要と計画

オートファジーによって細胞内異常蛋白質が分解されることにより細胞内恒常性は維持され、またオートファジーが正常に機能しない膵β細胞特異的Atg7欠損マウスは糖尿病を発症する。膵β細胞不全におけるオートファジーの機能を解明することは、糖尿病の予防や新規治療法の開発に役立つ。CCR4-NOTデアデニレース複合体はmRNAの3’末端にあるポリA鎖を短縮することでmRNA分解を制御する。CCR4-NOT複合体の構成分子欠損膵β細胞でオートファジーが亢進することから、CCR4-NOT複合体によるmRNA分解がオートファジーを制御する可能性が考えられた。オートファジーを制御するmRNA分解や翻訳制御といった転写後制御は未だ不明な点が多く、その解明はオートファジーの制御機構を理解するのに有益である。本研究は、mTORシグナル伝達系を介したCCR4-NOT複合体によるmRNA分解によって制御されるオートファジーの分子機構を明らかにする。またmRNA分解機構の破綻によるオートファジーの機能破綻によって引き起こされるインスリン生合成・分泌における膵β細胞不全の発症メカニズムを解明する。本研究は、CCR4-NOT複合体の構成分子であり脱アデニル化活性を持つCNOT7とCNOT8欠損膵β細胞を使用して、CCR4-NOT複合体によるmRNA分解を介して制御されるオートファジーの分子機構を明らかにする。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Takahashi A, Suzuki T, Soeda S, Takaoka S, Kobori S, Yamaguchi T, Mohamed HMA, Yanagiya A, Abe T, Shigeta M, Furuta Y, Kuba K, Yamamoto T. The CCR4-NOT complex maintains liver homeostasis through mRNA deadenylation. Life Sci Alliance. 2020, Apr 1;3(5):e201900494.

Mostafa D, Takahashi A, Yanagiya A, Yamaguchi T, Abe T, Kureha T, Kuba K, Kanegae Y, Furuta Y, Yamamoto T, Suzuki T. Essential functions of the CNOT7/8 catalytic subunits of the CCR4-NOT complex in mRNA regulation and cell viability. RNA Biol. 2020, Mar;17(3):403-416.

Blandino-Rosano M, Scheys JO, Jimenez-Palomares M, Barbaresso R, Bender AS, Yanagiya A, Liu M, Rui L, Sonenberg N, Bernal-Mizrachi E. 4E-BP2/SH2B1/IRS2 Are Part of a Novel Feedback Loop That Controls β-Cell Mass. Diabetes. 2016, Aug;65(8):2235-48.

キーワード

Post-transcriptional regulation、The CCR4-NOT deadenylase complex、mRNA turnover、mRNA poly(A) tail、Pancreatic β cell homeostasis、Insulin biosynthesis、Pancreatic β cell failure、mTOR signaling pathway