小腸上皮におけるミクロオートファジーの分子機構

研究代表者 和田 洋（Wada You） 大阪大学・産業科学研究所　准教授 https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/organization/thi/thi_05/

研究課題の概要と計画

私たちは、マウス発生初期胚の上皮組織において、リソソームがエンドソームを「飲み込む」、ミクロオートファジーとして知られる膜ダイナミクスが起きていることを明らかにしました。しかしながら、ミクロオートファジーが起きる分子的な基盤に関する研究は手つかずのままです。最近、新生仔の腸管の吸収上皮でも、ミクロオートファジーによってエンドソーム・リソソーム間の物質輸送がおこなわれることを見いだしました。初期胚とは異なり、小腸上皮からは生化学的な研究に十分な試料を得ることができ、さらには数日に渡る組織培養が可能です。また消化管内腔から薬剤を投与することもできます。これらの利点を活かし、ミクロオートファジーを駆動する分子メカニズムを生化学的・薬理学的に解明していくことを目標としています。また新生仔の小腸は母子間の免疫賦与、あるいは腸を介した病原体感染などに重要な組織でもあります。こうした新生仔の生理機能とミクロオートファジーの関連を、遺伝子欠失モデルマウスの表現型から明らかにしていきます。

本研究課題に関連する代表的論文3報

Kawamura N, Takaoka K, Hamada H, Hadjantonakis AK, Sun-Wada GH, and Wada Y. Rab7-mediated endocytosis establishes patterning of Wnt activity through inactivation of Dkk antagonism. Cell Reports 2020, 31, 107733.

Wada Y, Sun-Wada GH, Kawamura N, and Yasukawa J. Membrane dynamics in mammalian embryogenesis: Implication in signal regulation. Birth Defects Res Part C 2016, 108, 33-44.

Wada Y. Vacuoles in mammals: A subcellular structure indispensable for early embryogenesis. BioArchitecture 2013, 3, 13-19.

キーワード

Enterocyte, Endocytosis, Endosome, HOPS complex, Lysosome, Microautophagy, Rab7, Vacuole