公募研究
分泌性オートファジーのシナプス形成における役割の解明
研究代表者井端 啓二(Ibata Keiji) |
研究課題の概要と計画
私たちの脳内では、経験や学習時に起こる神経活動によって神経細胞間のシナプス伝達効率の変化や、シナプスの形態及び数の変化が起こる。私たちはこれまでにシナプス形成を誘導する分子であるCbln1が、軸索に局在するリソソームから神経活動によって細胞外に分泌されること、および、その分泌に関わる分子群を明らかにしている(Ibata et al., 2019)。いくつかの分子はオートファジーからの分泌メカニズムと共通する分子が使われており、Cbln1を含むリソソームとオートファジーからの分泌は相互に関係している可能性がある。そこで、Cbln1や他のシナプス形成因子の分泌と分泌性オートファジーの時空間情報を調べることで分泌性オートファジーがシナプス形成や伝達効率を制御するかを明らかにすることによってシナプス形成を調節するメカニズムの理解をめざす。精神疾患、神経発達症及び認知症にはシナプスに関連する分子が数多く関わっているため、本研究によって病態の解明や治療法の開発を大きく進める可能性がある。
本研究課題に関連する代表的論文3報
Ibata K, Kono M, Narumi S, Motohashi J, Kakegawa W, Kohda K, Yuzaki M.Activity-dependent secretion of synaptic organizer Cbln1 from lysosomes in granule cell axons. Neuron. 2019, 102: 1184-1198.
Ibata K, Sun Q, Turrigiano GG.Rapid synaptic scaling induced by changes in postsynaptic firing. Neuron. 2008, 57: 819-826.
Wierenga CJ, Ibata K, Turrigiano GG.Postsynaptic expression of homeostatic plasticity at neocortical synapses. Journal of Neuroscience. 2005, 25: 2895-2905.
キーワード
エキソサイトーシス(exocytosis)、リソソーム(lysosome)、シナプス形成因子(synapse organizer)、軸索(axon)、神経細胞(neuron)