公募研究
TORC1によるミクロヌクレオファジー制御機構
研究代表者丑丸 敬史(Ushimaru Takashi) |
研究課題の概要と計画
栄養源飢餓(TORC1不活性化)により誘導される出芽酵母ミクロヌクレオファジーでは、核と液胞の接触部 (NVJ)で起こる液胞内部への核膜陥入を契機として核小体タンパク質が液胞内部に取り込まれて分解される。その際、核小体タンパク質が自らNVJに近づくことでその分解が促進される一方、分解を逃れるrDNAは核小体タンパク質から分離して逆にNVJ から遠ざかることを見出した。その際、rDNA染色体の凝縮が原動力となり、rDNAの核膜繋留因子CLIP/cohibinに依存する形でrDNAが核膜を伝わりながら移動することが示唆された。これらのシステムが不全になると、ヌクレオファジーによる核小体タンパク質分解が損なわれ、飢餓下の生存率も低下する。本研究では、(1)液胞膜がNVJで核小体タンパク質を内包して陥入する動作原理の解明、(2)TORC1による液胞膜陥入制御の解明を目指す。(1)に関しては、ミクロオートファジーの液胞膜の変形に関与するESCRTがミクロヌクレオファジーにも必要なことを予備的実験により見出しており、ミクロヌクレオファジーにおけるESCRTの挙動の解析を進める計画である。(2)に関しても、TORC1下流のキナーゼとフォスファターゼがミクロオートファジーに関与することを見出しており、その分子機構の解析を進める計画である。
本研究課題に関連する代表的論文3報
Md. Golam Mostofa, Muhammad Arifur Rahman, Koike N, Akter MST Yeasmin, Nafisa Islam, Talukdar Muhammad Waliullah, Hosoyamada S, Shimobayashi M, Kobayashi T, Michael N. Hall, Ushimaru T. CLIP and cohibin separate rDNA from nucleolar proteins destined for degradation by nucleophagy. 2018, J. Cell Biol. 217: 2675-2690.
Md. Golam Mostofa, Shamsul Morshed, Shibata R, Takeichi Y, Muhammad Arifur Rahman, Hosoyamada S, Kobayashi T, Ushimaru T. rDNA condensation promotes rDNA separation from nucleolar proteins degraded for nucleophagy after TORC1 inactivation. Cell Rep. 2019, 28: 3423-3434.e2.
Tasnuva Sharmin, Shamsul Morshed, Ushimaru T. PP2A promotes ESCRT-0 complex formation on vacuolar membranes and microautophagy induction after TORC1 inactivation. Biochem Biophys Res Commun. 2020, 524: 614-620.
キーワード
Microautophagy; micronucleophagy; nucleolus; nucleophagy; TORC1; ESCRT; rDNA.