PubMedID | 28277980 |
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タイトル | SIDT2 mediates gymnosis, the uptake of naked single-stranded oligonucleotides into living cells. |
ジャーナル | RNA Biol, 2017 Mar 09; [Epub ahead of print] |
著者 | Takahashi M, Contu VR, Kabuta C, Hase K, Fujiwara Y, Wada K, Kabuta T |
- オートファジー関連分子SIDT2の別の機能
- Posted by 国立精神・神経医療研究センター 疾病研究第四部 高橋 昌幸
- 投稿日 2017/03/21
オートファジー関連分子の別の機能についての論文がアクセプトされましたので、紹介いたします。我々は、ATP依存的にリソソーム内にRNA及びDNAを直接取り込んで分解するRNautophagy・DNautophagyに関する研究を進めています。これまでの研究により、我々の研究グループはSIDT2というタンパク質がリソソームによるRNA・DNAの取り込みを仲介するということを見出しました。今回我々は、SIDT2が1本鎖オリゴ核酸の細胞内への取り込みにも関与するということを明らかにしました。
現在のところ、いくつかのアンチセンス1本鎖オリゴ核酸は、疾病治療を目的とした核酸医薬品として承認されています。1本鎖オリゴ核酸は、細胞内へトランスフェクション試薬を用いずに、裸のまま取り込まれることが知られています。この現象はgymnosisとも呼ばれていますが、現在のところ、その詳細な分子メカニズムは解明されていません。そこで我々は、SIDT2がgymnosisにも関係する可能性を考えました。まず、内在性SIDT2をノックダウンしたHeLa細胞では、標識した1本鎖オリゴの細胞内への取り込みが減少することを共焦点顕微鏡解析により確認し、miR-16を標的としたアンチセンスオリゴのアンチセンス効果も弱くなることを見出しました。また、SIDT2を過剰発現させたHeLa細胞では、1本鎖オリゴの細胞内への取り込みが上昇することも明らかにしました。それに対して、核酸輸送活性の無いSIDT2を過剰発現させたHeLa細胞では1本鎖オリゴの細胞内への取り込みには影響を与えないことが分かりました。そして、SIDT2が非選択的エンドサイトーシスを活性化させることは観察されませんでした。
この論文は、今後の核酸医薬研究の発展に繋がる可能性があると考えられますが、SIDT2を過剰発現させるとRNautophagy・DNautophagyも活性化されるので、現時点ではすぐに核酸医薬に応用するのは難しいと考えられます。
以前の我々のグループの研究成果により、SIDT2がリソソームの膜上で、RNA・DNAをリソソーム内に取り込む働きを持っていることが見出されました。そして今回の論文によって、SIDT2は細胞膜上にも存在し、細胞内に1本鎖オリゴを取り込むことを明らかにしたことから、SIDT2は双方向に核酸を輸送することが考えられます。これはC.elegansのオルソログSID-1が双方向に核酸を輸送することと一致します。また、このことはSIDT2が核酸トランスポーターであるという仮説を支持しています。