PubMedID | 28492547 |
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タイトル | Autophagy is essential for hearing in mice. |
ジャーナル | Cell Death Dis, 2017 May 11;8(5);e2780, |
著者 | Fujimoto C, Iwasaki S, Urata S, Morishita H, Sakamaki Y, Fujioka M, Kondo K, Mizushima N, Yamasoba T |
- オートファジーはマウスの聴覚に重要である
- Posted by 東京大学医学系研究科 外科学専攻 感覚・運動機能講座 藤本千里
- 投稿日 2017/05/13
内耳の感覚細胞である有毛細胞は、さまざまな特化された微細構造を持ち、音や加速度といった機械的刺激を生体内の電気信号に変換するという非常に巧妙な機能を担いますが、細胞分裂せず一度障害を受けると機能的再生が困難なため、障害の多くは不可逆的です。このため有毛細胞においては、細胞の恒常性維持が特に重要と考えられます。私どもは、聴覚系の感覚細胞である蝸牛有毛細胞における恒常的オートファジーが、マウスの聴覚機能および細胞形態の維持に重要な役割を果たすことを明らかにしました。
Autophagy-related 5(Atg5)を有毛細胞にて欠損させたノックアウトマウスを作製し、聴覚機能および細胞形態の解析を行いました。ノックアウトマウスは先天性の高度難聴を呈しました。組織学的検討では、聴覚獲得前の5日齢では正常形態でしたが、聴覚獲得後の14日齢において聴毛の変性、および一部の細胞の脱落を認め、8週齢においては、細胞変性がさらに進行していました。5日齢では、聴毛におけるFM1-43の取り込みは保たれ、聴毛におけるmechanotransductionの機能は正常と考えられました。
以上より、聴覚獲得前の有毛細胞におけるmechanotransductionの機能解析が十分とは言えないものの、オートファジーの機能停止による有毛細胞の障害は、主として発生異常によらない細胞変性であると推察され、聴覚獲得期に至るまでの変性により高度難聴を呈した可能性が考えられました。
今回の研究報告を足がかりとして、オートファジーと聴覚障害の病態形成との関連性について、さらなる研究の進展が期待されます。