PubMedID 28724756
タイトル Lysosomal targeting of SIDT2 via multiple YXXΦ motifs is required for SIDT2 function in the process of RNautophagy.
ジャーナル J Cell Sci, 2017 Jul 19; [Epub ahead of print]
著者 Contu VR, Hase K, Kozuka-Hata H, Oyama M, Fujiwara Y, Kabuta C, Takahashi M, Hakuno F, Takahashi SI, Wada K, Kabuta T
  • SIDT2のリソソーム膜への局在化機構とRNautophagyとの関連
  • Posted by 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第四部 Contu Raluca
  • 投稿日 2017/07/26

 2年前のオートファジー研究会(淡路島)で一部発表した内容を中心とした論文が受理されたので紹介させて頂きます。論文と同じissueにfirst author のshort interview も記載されるようなので合わせて読んで頂けたら幸いです。

 私達の研究はリソソームによる核酸分解に焦点を当てています。RNautophagyはリソソームによるRNA分解経路の1つであり、ATPの消費を伴ってRNAがリソソーム内に直接取り込まれ、分解されます。リソソームに局在するputative transporter SIDT2がRNAのリソソーム膜通過を仲介することも明らかとなっています。また、SIDT2のノックダウンにより、マクロオートファジー非依存的にリソソームによる細胞内RNA分解が顕著に抑制され、SIDT2を介するRNautophagyは細胞内におけるRNA分解に貢献していることも報告しています。

 本研究ではまず、細胞内RNA分解に対するSIDT2過剰発現の影響をneuro2a細胞で調べました。驚いたことに、SIDT2の過剰発現によって細胞内RNA分解が最大で1.7倍まで上昇しました。私達の知る限りでは、単独で過剰発現させるだけで著しく細胞内RNA分解を促進できる初めての内在性細胞内タンパク質です。Bafilomycin A1処理により、SIDT2過剰発現によるRNA分解促効果が抑制されたことから、その分解促進がリソソームにおける分解によるものだということがわかりました。また、上記のことからSIDT2が細胞内RNA分解において重要な役割を果たしていることが強く示唆されました。

 次にSIDT2のリソソーム膜への局在化機構が不明だったため、SIDT2のリソソーム局在に必要なシグナルを明らかにする目的で研究を進めました。主な結論について記載します。

 ○ SIDT2の膜貫通ドメイン1と2の間の細胞質領域にある3つのYXXΦモチーフ(YGSF, YDTL, YLCV)に変異を導入した変異体(3YS変異体)がリソソームに局在しなくなり、これらの3つのYXXΦモチーフがSIDT2のリソソーム局在に必要であることが明らかとなりました。現在までに知られていたYXXΦを介してリソソーム膜に局在する膜タンパク質は全てC末端に存在する1つのYXXΦモチーフによって制御を受けています。次の2点についてはSIDT2が初めての報告だと考えております。
・C末端に存在しないYXXΦモチーフを介してリソソームに局在する膜タンパク質
・複数のYXXΦモチーフを介してリソソームに局在する膜タンパク質

 ○ Neuro2a細胞に過剰発現させた3YS変異体の約50%はゴルジ体に蓄積しました。

 ○ YGSFモチーフはadaptor protein complexes AP-1とAP-2と相互作用することが示されました。このことからYGSFモチーフを介するSIDT2のリソソーム局在制御はAP-1とAP-2を介して行われていることが示唆されました。

 ○ これらの3つYXXΦモチーフによるSIDT2のリソソーム局在はin vitroにおいても細胞レベルにおいてもSIDT2を介するRNautophagyの活性に必要であることが示されました。

 ○ SIDT2のパラログであるSIDT1は主にはリソソームに局在しません。SIDT1にSIDT2の三つのYXXΦモチーフを導入するとこのSIDT1変異体はリソソームに局在を示すようになり、またSIDT2と同程度細胞内RNA分解を促進できるようになりました。これらのことからSIDT2の3つのYXXΦモチーフが実際に機能していることが確認されました。

 論文の再投稿の締め切りはISAに近く、学会の準備とリバイスの実験を間に合わせられるかどうかはとても不安でしたが無事に終わらせてほっとしました。本研究はRNautophagyの分子メカニズムの解明、細胞内RNA分解機構の理解、そしてリソソーム膜タンパク質の局在化機構の解明に貢献すると考えております。

 現在、PubMedから論文のページへリンクが繋がっていないので下記がリンク先のURLになります。
 http://jcs.biologists.org/content/early/2017/07/18/jcs.202481