PubMedID 30952864
タイトル Autophagy regulates lipid metabolism through selective turnover of NCoR1.
ジャーナル Nat Commun, 2019 04 05;10(1);1567,
著者 Saito T, Kuma A, Sugiura Y, Ichimura Y, Obata M, Kitamura H, Okuda S, Lee HC, Ikeda K, Kanegae Y, Saito I, Auwerx J, Motohashi H, Suematsu M, Soga T, Yokomizo T, Waguri S, Mizushima N, Komatsu M
  • 選択的オートファジー基質 核内受容体コリプレッサー1(NCoR1)
  • Posted by 順天堂大学医学部生理学2 小松雅明
  • 投稿日 2019/12/29

核内受容体コリプレッサー1(NCoR1)が栄養飢餓に応じてGABARAPと特異的に結合し、オートファジー依存的に分解されることを発見しました。NCoR1は、核内受容体とヒストン脱アセチル化酵素に結合し、ヒストンの脱アセチル化を促進することで様々な核内受容体による遺伝子発現を抑制しています。そこで、オートファジーによるNCoR1の分解の意義を検討するため、マウスの肝臓においてオートファジー必須遺伝子Atg7を欠失させた結果、NCoR1が肝臓に過剰に蓄積し、脂肪酸酸化酵素の遺伝子発現のマスター転写因子であるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα、核内受容体の1つ)が抑制されることを確認しました。さらに、肝臓特異的Atg7欠損マウスは、栄養飢餓に応じた脂肪酸酸化関連遺伝子群の遺伝子発現やエネルギー源のケトン体(脂肪酸酸化で産生されたアセチルCoAから生成される栄養源)産生を著しく低下させることも確認しました。すなわち、栄養飢餓に応じてNCoR1がオートファジー依存的に分解されることにより効率的にPPARαが活性化し、脂肪酸酸化が促進されることを意味します。
以上の結果から、オートファジーによる新たな細胞生理機能が明らかになりました。オートファジーは単にアミノ酸、グルコース、脂肪酸などの栄養素を細胞に供給するだけでなく、それらを効率的に使用するためにも機能していると言えます。