PubMedID 31944164
タイトル Cytosolic domain of SIDT2 carries an arginine-rich motif that binds to RNA/DNA and is important for the direct transport of nucleic acids into lysosomes.
ジャーナル Autophagy, 2020 Jan 16;1-15, [Epub ahead of print]
著者 Hase K, Contu VR, Kabuta C, Sakai R, Takahashi M, Kataoka N, Hakuno F, Takahashi SI, Fujiwara Y, Wada K, Kabuta T
  • RNautophagyにおけるSIDT2の核酸との結合の重要性
  • Posted by 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 Contu Viorica Raluca
  • 投稿日 2020/01/27

 Autophagy誌に掲載された私たちの最近の論文をご紹介します。9th ISA(台湾)で一部発表した内容でもあります。

 私達は膜透過型オートファジーに分類されるRNautophagyとDNautophagy (RDA)について研究を行っています。RDAにおいてはRNA/DNAが直接リソソーム内に取り込まれ、分解されます。以前、リソソーム膜タンパク質LAMP2Cが基質核酸と直接結合し、RDAにおいて受容体として機能することを報告しました。また、リソソーム膜上に局在しputative RNA transporterとして機能するSIDT2は核酸のリソソーム内への輸送を仲介することも明らかにしました。LAMP2C欠損リソソームはSIDT2を介するRDA活性があることから「SIDT2自身も核酸と結合する」という仮説を立てて研究を進めました。本研究により明らかとなった内容を記載します。

・SIDT2は膜貫通領域1と2の間の細胞質ドメインの後半(C末端側)部分に存在するアルギニンリッチモチーフ(ARM)を介してRNAとDNAと直接結合することが明らかとなりました。
・SIDT2は基質核酸に対してLAMP2Cと同様な選択性を有し、poly-(d)Gと結合しますがpoly-(d)A, poly-U, poly-dT, poly-(d)Cとは結合しないことがわかりました。
・ARMを介したSIDT2とRNAの結合は単離リソソームレベルでも、細胞レベルでもSIDT2を介するRNautophagy活性に必須であることが示されました。
・SIDT2の細胞質ドメインの後半部分は、ARMを介してCAGリピート依存的にハンチントン病の原因遺伝子であるHTT (huntingtin)のmRNAと結合することを見出しました。SIDT2の過剰発現はHTT mRNAの分解を促進し、HTT凝集体量を減少させました。
・細胞レベルにおいてLAMP2CとSIDT2の機能比較分析を行ったところ、これらのタンパク質がRNautophagy活性に対して相乗的に機能することがわかりました。SIDT2とLAMP2CのRNAと結合するARMはRNautophagyにおける相乗効果に不可欠であることも明らかになりました。

 本研究の成果として、核酸が脂質二重層を透過させる上でSIDT2の核酸との結合能力の重要性を示しました。また、神経変性疾患の原因となるタンパク質の発現レベルを低下させるためにRNautophagyの活性化が応用できる可能性も示されました。研究がまだ必要ですがRNautophagyに関する研究が神経変性疾患の治療に貢献することを期待しております。