PubMedID | 32453403 |
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タイトル | TORC1 inactivation stimulates autophagy of nucleoporin and nuclear pore complexes. |
ジャーナル | J Cell Biol, 2020 Jul 06;219(7); |
著者 | Tomioka Y, Kotani T, Kirisako H, Oikawa Y, Kimura Y, Hirano H, Ohsumi Y, Nakatogawa H |
- 核膜孔複合体/ヌクレオポリンの選択的オートファジー
- Posted by 東京工業大学・生命理工学院 中戸川 仁
- 投稿日 2020/07/05
発表から少し時間が経ってしまいましたが、最近私たちのグループからJ Cell Biolに発表した核膜孔複合体(以下、NPC)およびその構成因子であるヌクレオポリンの選択的オートファジーに関する論文を紹介させていただきます。
この研究は、大学院生だった富岡優衣さんが中心になって進めてくれました。要点は以下の通りです。
・TORC1が失活する条件下(窒素飢餓やラパマイシン処理)でNPCがオートファジーで分解される。
・NPCはヌクレオファジーで見られたような核膜由来の二重膜小胞に埋め込まれた状態でオートファゴソームに取り込まれる。
・しかし、ヌクレオファジーレセプターであるAtg39を欠損させてもNPCの分解は部分的にしか低下しない。つまり、NPCはヌクレオファジーでも分解されるが、主には別の経路を介して分解される。(ATG39破壊株の解析から、別経路でもNPCは核膜由来の二重膜小胞に埋め込まれた状態でオートファゴソームに取り込まれることが示唆された。)
・一方、NPCの分解はAtg11とAtg8のAtg8-family interacting motif(AIM)結合能には強く依存するので、未知のレセプターの関与が示唆される。
・NPCの分解はNPCの量を減らすほど活発に起こるわけではない。また、NPCのアセンブリー効率が低下する変異によってNPCの分解が昂進することから、オートファジーによるNPCの分解はTORC1活性低下状態でのNPCの品質管理に寄与しているのはないか。
・NPCの細胞質フィラメントを構成するヌクレオポリンの1つ、Nup159にAIMを同定した。このAIMに変異を入れるとNup159の分解には欠損が見られたが、他のヌクレオポリンの分解は正常であった。したがって、Nup159のAIMは、NPCに組み込まれていないNup159の分解を媒介するが、NPCの分解には重要でないことが示唆された。NPC丸ごとの分解はNPC-phagy、NPCに組み込まれていないヌクレオポリンの分解をnucleoporinophagyと定義した。
以上です。またご存知の方もおられるかもしれませんが、私たちよりも早く、Stefan Jentschのラボに居たBoris Pfanderのグループにほぼ同じ内容をNature Cell Biologyに発表されてしまいました。しかし、私たちと彼らとで合わない結果もいくつか見られます。一番大きな点は、彼らはNup159のAIMの変異で他のヌクレオポリンの分解にも欠損が見られたことから、Nup159がNPC-phagyのレセプターであると結論付けているところです(私たちもこのような結果を期待していたのですが・・)。用いる酵母のgenetic backgroundの違いでNPC分解のAtg39への依存度が変わってくるというようなことがあるので、彼らとは用いている株が違うことが原因かもしれません(彼らは見慣れない株(Ubの分野のスタンダード?)を使っています)。
今後の展望としましては、やはり私たちとしましては未知のNPC-phagyレセプターが存在すると思っていますので、それを同定し、その欠損細胞の解析からNPC-phagyの生理的意義を明らかにしたいと考えています。(同定してみたら第2のヌクレオファジーレセプターだった、という可能性も残っていますが。。。)また、Nup159は単独で分解されるのか、他のヌクレオポリンとのサブコンプレックスとして分解されるのか、その意義は?といった問題にも取り組んでいきたいと考えています。