PubMedID | 32620754 |
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タイトル | Super-assembly of ER-phagy receptor Atg40 induces local ER remodeling at contacts with forming autophagosomal membranes. |
ジャーナル | Nat Commun, 2020 Jul 03;11(1);3306, |
著者 | Mochida K, Yamasaki A, Matoba K, Kirisako H, Noda NN, Nakatogawa H |
- ERファジーレセプターAtg40の局所的な多量体化が小胞体膜を変形させる
- Posted by 東京工業大学・生命理工学院(現 理研・脳神経科学センター) 持田 啓佑
- 投稿日 2020/08/09
最近発表したERファジーに関する私達の研究成果についてご報告させて頂きます。この研究は微生物化学研究所の山崎章徳さん(当時)、野田展生さんらとの共同研究になります。
私達はこれまで出芽酵母において、ERファジーの分子メカニズムの研究を進めてきました。この論文ではまずレセプターであるAtg40がReticulon homology domain (RHD) と呼ばれる脂質膜を湾曲させる領域を持つことを示しました。RHDを持つタンパク質は多量体化することで脂質膜を湾曲させることが知られていますが、Atg40は基本的に二量体としてER上に存在し、隔離膜の形成およびAtg8との結合に依存して局所的に三量体以上の多量体を形成することを明らかにしました。Atg8-PEは自己多量体化する性質を持つことから、Atg40二量体とAtg8多量体の多価的な相互作用によって、隔離膜とERの接触部位においてAtg40-Atg8高次集合体が形成されると考えています。Atg40の多量体化を人為的に誘導すると、小胞体膜が濃縮された構造が形成されたことから、多量体化したAtg40は小胞体膜を「折りたたむ」性質を持つことが示唆されました。実際に過去の電子顕微鏡解析において、小胞体膜が複雑に折りたたまれるようにして詰め込まれている様子が観察されており(Mochida et al, 2015)、Atg40の局所的な多量体化が、こうしたオートファゴソームへのERの効率的な詰め込みを媒介するというモデルを提唱しました。
哺乳動物においては、RHDを持つERファジーレセプターが、分解するER領域を断片化させるというモデルが提唱されています。実際にAtg40のRHDを一般的な膜貫通領域に置き換えたキメラタンパク質では、分解しようとしているERを断片化できず、隔離膜と思われる構造がERに張り付いた状態でERファジーが停止しました。これらの結果はERの断片化におけるRHDの重要性を示していますが、一方でAtg40のRHDが直接小胞体膜の断片化を引き起こすのか、あるいは別のメカニズムによる断片化をサポートしている(ERを断片化しやすい形状に保つなど…)だけなのかははっきりしておらず、今後の課題となります。
また本研究では、山崎さんと野田さんが、酵母(Atg40)や哺乳動物(FAM134B, SEC62, RTN3)のERファジーレセプターとAtg8ホモログとの相互作用の構造基盤を明らかにしました。これらのレセプターは全てAIM(LIR)のC末端側のヘリックス構造によってAtg8ホモログとの結合が強化されていることが分かりました。このような特徴的なAtg8との結合様式が保存されていることは、ERファジーにおいてはERと隔離膜を強く結びつける仕組みが必要であることを示唆しています。