PubMedID 32891055
タイトル Modeling Membrane Morphological Change during Autophagosome Formation.
ジャーナル iScience, 2020 Aug 15;23(9);101466, [Epub ahead of print]
著者 Sakai Y, Koyama-Honda I, Tachikawa M, Knorr RL, Mizushima N
  • オートファゴソーム形成における膜動態のモデリング
  • Posted by 東京大学医学系研究科 境祐二
  • 投稿日 2020/09/07

最近発表したオートファゴソーム形成の数理モデルに関する私達の研究成果についてご報告させて頂きます。この研究は同研究室の水島昇さん、本田郁子さん、京都大学の立川正志さん、マックスプランク研究所のRoland Knorrさんとの共同研究になります。
オートファジーにおいて、オートファゴソーム形成は膜の大規模な形態変化を伴う現象です。その変化は極めてユニークで、隔離膜といわれる扁平なディスク状の小胞が、成長とともにカップ状に弯曲し、最後にカップの口が閉じて球状のオートファゴソームが形成されます。多くのオートファジー関連因子はこのオートファゴソーム形成過程に関与してお り、隔離膜の形態変化はこれらの因子により制御されていると考えられます。しかし、どのような物理機構により隔離膜の形態変化が制御されているのかは謎のままでした。
私たちは、曲率因子による隔離膜の形態制御の数理モデルを構築し、オートファゴソーム形成における隔離膜の形態変化を解析しました。その結果、隔離膜成長とともに曲率因子の膜上分布が自発的に変化することで、隔離膜の一連の形態変化を理解できることを示しました。この数理モデルは、実際に細胞内で観測されるオートファゴソーム形成時の隔離膜変形を定量的に説明します。さらに、オートファゴソームの大きさは曲率因子量によって制御されていることを予測します。
本研究成果は、一見複雑に見えるオートファジーの膜動態が、単純な物理機構に基づく数理モデルによる解析が有効であることを示唆しています。今後、膜動態の計測とそれに基づく数理解析とを組み合わせることで、オートファジー動態の制御機構について統合的な理解が進むことが予想されます。