PubMedID 32811819
タイトル Age-dependent loss of adipose Rubicon promotes metabolic disorders via excess autophagy.
ジャーナル Nat Commun, 2020 08 18;11(1);4150,
著者 Yamamuro T, Kawabata T, Fukuhara A, Saita S, Nakamura S, Takeshita H, Fujiwara M, Enokidani Y, Yoshida G, Tabata K, Hamasaki M, Kuma A, Yamamoto K, Shimomura I, Yoshimori T
  • 脂肪細胞のRubicon低下は老化を促進する
  • Posted by 大阪大学大学院医学系研究科/生命機能研究科 山室 禎
  • 投稿日 2020/09/26

最近、私たちの研究室から発表した論文を紹介させていただきます。本研究では、老化に伴い脂肪細胞のオートファジーが過剰になり、代謝疾患を引き起こす現象とその機構を明らかにしました。脂肪細胞は、余剰なエネルギーを中性脂肪として脂肪滴に蓄積し、様々な液性因子を分泌して代謝恒常性を維持しています。老化に伴い脂肪細胞の機能が低下し、代謝恒常性が破綻した結果、糖尿病や脂肪肝といった代謝疾患 (生活習慣病)が引き起こされます。しかしながら、加齢に伴って脂肪細胞の機能が低下する機構は分かっていませんでした。私たちは最近、オートファジーの負の制御因子であるRubiconが加齢に伴い蓄積し、老化を促進していることを示しました (Matsunaga K et al., Nature Communications, 2009; Nakamura S et al., Nature Communications, 2019)。そのため、脂肪細胞のRubiconも同様に老化を促進している可能性があると考えました。驚くべきことに、他の組織とは逆に、マウス脂肪組織のRubiconは老化に伴い顕著に減少しました。体外培養の実験から、老化マウスの脂肪組織ではオートファジー活性が増加していることも明らかになりました。脂肪細胞特異的にRubiconをノックアウトしたマウスは、耐糖能異常や肝脂肪症といった、生活習慣病に似た表現型を呈しました。これらの結果から、老化に伴う脂肪細胞のRubicon低下がオートファジーを過剰にし、生活習慣病を引き起こしていると考えられました。続いて遺伝子発現を解析したところ、Rubiconを抑制した脂肪細胞ではPPARγというマスター転写因子の活性が低下していることが分かりました。さらに、PPARγのコアクチベーターであるSRC-1とTIF2がオートファジーによって分解されていることを見出しました。つまり、脂肪細胞でRubiconが低下すると、SRC-1とTIF2がオートファジーに分解されて減少し、そのためにPPARγ活性が低下します。この機構を介して脂肪細胞の機能が低下し、老化が促進されると考えています。本研究は内分泌代謝内科の下村先生、福原先生と老年総合内科の山本先生、竹下先生のご協力があり、進めることができました。この場をお借りして心より御礼申し上げたいと思います。