PubMedID 33077556
タイトル An autophagy-dependent tubular lysosomal network synchronizes degradative activity required for muscle remodeling.
ジャーナル J Cell Sci, 2020 Nov 09;133(21);
著者 Murakawa T, Kiger AA, Sakamaki Y, Fukuda M, Fujita N
  • ショウジョウバエの筋細胞に見られる管状のオートリソソームネットワーク
  • Posted by 東京工業大学生命理工学院 村川 直柔
  • 投稿日 2020/12/09

 先日、JCSにアクセプトされました私たちの論文を紹介させていただきます。

 ショウジョウバエ幼虫の一群の筋細胞は、蛹の期間に、成虫の筋細胞に作り変えられます。私たちは、その過程にオートファジーが重要であることを先に報告しました(Fujita et al., 2017)。今回、筋細胞のリモデリングに伴うオルガネラの動態を解析する過程で、興味深いことに、Syntaxin 17 (Stx17)で標識される管状のネットワークが一過的に形成されることを見出しました。Stx17陽性でしたが、この管状構造にはリソソーム関連タンパク質が局在し、酸性かつ分解能を持っていました。さらに、管状ネットワークにオートファゴソームが融合し消失する様子が観察されたことから、オートファゴソームの分解にも関わることが明らかになりました。このような特徴から、私たちはこの構造体を“tubular AutoLysosomal(tAL) network”と呼ぶことにしました。
 tAL networkの形成には、ATG9をはじめとしたコアATG遺伝子が必須でしたが、形成効率には関わるものの、ATG12ユビキチン様結合系は、tAL networkの形成に必須ではありませんでした。それと相関して、Atg9 null変異体では、Atg5 null変異体に比べて、筋細胞の構造や機能に大きな障害が見られました。よって、tAL networkは、筋細胞オルガネラの効率的な分解に働いているのだろうと考えています。蛍光イメージングにより、tAL networkの内腔は広い範囲でつながっており、不連続な球状のリソソームに比べて、より均質になっていることがわかりました。また、球状の構造が管状のネットワークになると体積あたりの表面積が大きくなりますので、tAL networkの意義を理解する上では、均質性・連続性と表面積の増大が重要なポイントだろうと思います。
 論文ではデータを示していませんが、tAL networkはハエのその他の組織でも観察されています。今後は、tAL networkの形成に直接的に働く遺伝子を同定し、tAL networkの形成を抑制もしくは亢進させた際の表現型を観察することで、その生物学的な意義を明らかにしたいと考えています。また、Stx17がオートリソソーム上に留まり続けるメカニズムにも興味を持って解析しています。