PubMedID 33625870
タイトル Atg15 in consists of two functionally distinct domains.
ジャーナル Molecular biology of the cell 2021 Feb;mbcE20070500.
著者 Hirata E, Shirai K, Kawaoka T, Sato K, Kodama F, Suzuki K
  • 出芽酵母のAtg15は二つの機能ドメインからなる
  • Posted by 東京大学、新領域(現 早稲田大学、ナノ・ライフ創新研究機構) 平田 恵理
  • 投稿日 2021/02/26

最近Molecular Biology of the Cellにアクセプトされました我々の研究について報告させていただきます。

液胞内リパーゼであるAtg15は出芽酵母におけるオートファジックボディの分解に必須であり、N末端側に膜貫通ドメインを持ちC末端側にリパーゼドメインを持つことが知られています。しかしながら、それぞれのドメインがin vivoにおいて独立に機能しうるかどうかはわかっていませんでした。
そこで我々はまず、Atg15のN末端側の膜貫通ドメインの細胞質側にGFPタグを付けて局在を観察しました。その結果、N末端側の膜貫通ドメインのみで、multivesicular body (MVB) pathwayを介した液胞輸送に必要十分であることを見いだしました。また、C末端側のリパーゼドメインを、本来のMVB pathwayの代わりにPho8 pathwayを介して液胞へと局在化させたところ、オートファジックボディが分解されることを示しました。この結果から、リパーゼドメインが液胞内での分解活性を担っていることが分かりました。つまり、N末端側ドメインがMVB pathwayの輸送シグナルであること、およびC末端側のリパーゼドメインが液胞へと運ばれることがオートファジックボディの分解に重要であることがわかりました。
 またAtg15の変異体解析の結果から、W466残基がAtg15のオートファジックボディ分解活性に重要であることがわかりました。興味深いことにW466残基をアラニンに置換すると、Cvt bodyは分解できるがオートファジックボディは分解できないという表現型となりました。この結果から我々は、Atg15には基質(小胞)の大きさ(曲率?)を認識する機構があるのではないかと考えています。例えば通常状態のAtg15は柔軟性が高く、幅広い大きさの基質を認識して分解することができるのではないか、その構造変化にはW466残基が重要で、変異を加えるとAtg15の基質認識の柔軟性が低下するのではないか、と妄想しております。Atg15の構造を解くことで、この辺りの謎も解明できるのではないかと思っています。